利便性 = 汎用性 + 拡張性 + 簡潔性 + 明瞭性 vol.2

(vol.1より続く)

 

では、どのような点に課題が認められるでしょうか?

 

簿記を学ぶと、どのような取引にどのような勘定科目を使うのか、仕訳をどのように記録するのかといったことについてある程度の知識を得ることができます。

 

しかし、発展の歴史がそうであったように、実際の商業活動の中で上手く適用できてこそ、その知識が有効であると言えると思います。

 

会計を使うことの巧拙は人によってバラツキがあるのは当たり前の話です。何十年も経理を担当してきたベテランと入社したばかりで簿記の知識が全くない新人を比べても仕方ありません。

 

ですが、スキルに相当程度の違いがある担当者が同じ部署で日々の業務を行うことも当然に想定しうる話です。

 

また、管理部に会計に詳しい人材がいないことも想定できます。

 

そのような事情を勘案しておくことは経営に携わる人間の仕事ですが、なかなかそこまで配慮することも難しいのかもしれません。

 

それでも会社である以上は、日々の定常的な業務、月次での決算、上場企業であれば四半期や決算期が来た場合は法定開示に対応する必要があります。

 

会社法金融商品取引法などの法令で決められた要求事項がある場合、それを履行する責任は当然に生じてくるわけです。組織内の個別の事情、つまり必要なスキルが不足していること、知見が蓄積されていないこと等を汲み取ってもらうのは難しい話です。

 

要求事項の水準と組織の事情の両方を考えて仕事をすすめる必要があるということです。

 

大抵の場合、求められることに対して必要な人員が不足している、知見が足りない、仕事のやり方が上手くいっていない、情報の共有が不足しているといったことで、単純なミスが頻発したり、必要なことが漏れていたりといったことが起こります。

 

これは会計といったことに限らず、社会に存在するありとあらゆる制度に当てはまる話だと考えています。

殆どの場合、運用段階、つまり実際に現場の担当者が業務を進める段階で担当者の能力に任せて効率化や合理化を図ろうとしても、影響を行使できる範囲が限られます。もっと上流で考えないといけないのです。

 

基本的な思想を定めて、それに基づいて制度を考える。現場で奮闘される方々に過剰に負荷をかけるのではなく、適切な仕組みで対応するといったことが必要です。

 

そのためには意思決定の上流段階へと遡って考えていくことが大切です。影響の及ぶ範囲が格段に大きいからです。ですから、組織内においては経営体の意思決定がとても重要になるわけです。

 

(vol.3に続く)