かいけいがく vol.77 - ヘッジ会計 Part.3 -

(vol.76から続く)

 

ここで、為替予約等(為替予約や通貨スワップ等)の会計処理をみてみましょう。

 

金融商品会計基準に従えば、これらのデリバティブ取引は期末時に時価評価を行い、

評価差額は当期の損益として処理します。

 

ですが、外貨建金銭債権債務と為替予約等の関係がヘッジ会計の要件を満たした場合、

ヘッジ会計を適用することができます。

 

この場合、ヘッジ対象である外貨建金銭債権債務とヘッジ手段である為替予約等をそれぞれ期末時点で評価することになります(独立処理)。

 

ただし、例外的な方法として振当処理が認められます。

 

会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」

 

3.・・・振当処理とは、為替予約等により固定されたキャッシュ・フローの円貨額により外貨建金銭債権債務を換算し、直物為替相場による換算額との差額を、為替予約等の契約締結日から外貨建金銭債権債務の決済日までの期間にわたり配分する方法である。 

 

これだけだとよくわからないと思いますので、設例で確認しましょう。

 

例)A社(3月決算)はx1年1月に商品仕入をドル建てで100ドル行った。

円安による決済金額の増加のリスクをヘッジするために、x1年2月に為替予約を行った。これはヘッジ会計の要件を満たす。

決済日はx1年5月末であり、参考となる為替レートは以下のとおりである。

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(仕訳処理)

取引日

仕入 10,000 / 買掛金 10,000*1

*1 100ドル × 100円/ドル = 10,000

 

予約日

直々差額:取引日と予約日の直物レートの差額 

→当期の損益として処理

 

為替差損益 400 / 買掛金 400*2

*2 (104 - 100)円/ドル × 100ドル = 400

 

直先差額:予約日における直物レートと先物レートの差額

→決済日までの期間にわたり配分する。

買掛金 200 / 前受収益 200*3

*3 (104 - 102)円/ドル × 100ドル =200

 

期末日

前受収益 100 / 為替差損益 100*4

*4 200 × 2ヶ月/4ヶ月 = 100

 

決済日

買掛金 10,200 / 現金 10,200*5

*5 102円/ドル × 100ドル = 10,200

 

前受収益 100 / 為替差損益 100*6

*6 200 × 2ヶ月/4ヶ月 = 100

 

(vol.78へ続く)