かいけいがく vol.81 - 事業分離 Part.1 -
(vol.80から続く)
今回からは事業分離についてみていきます。
前回までは企業結合についての説明でした。
結合企業を中心として、結合当事企業についての会計処理を解説しましたが、
事業を分離する側の企業(分離元企業)ではどのように処理をするのかについて、
説明しているのが事業分離についての会計基準です。
まずは定義を確認しましょう。
4. 「事業分離」とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいう。なお、複数の取引が 1 つの事業分離を構成している場合には、それらを一体として取り扱う。
事業分離に関するポイントは一言で言えば、「投資の継続 or 投資の精算」です。
移転した事業に関して投資が精算したとみる場合、受け取った対価の時価と移転した事業の株主資本相当額との差額を移転損益として認識します。
逆に、移転した事業への投資が継続しているとみる場合、移転損益は認識せずに、受け取った資産の取得価額は移転した事業の株主資本相当額に基づいて算定します。
事業分離はパターンごとに分けると理解が進むと思いますので、
ここからは分離元企業の会計処理を各パターンごとに分けて解説します。
1.受取対価が現金等の財産のみ
(ⅰ)分離先:子会社
(個別)
受け取った現金等の移転前の帳簿価額で計上する。移転事業の株主資本相当額との差額は原則として移転損益として認識する。
仕訳
現金等 ×× / 移転事業 ××
移転損益 ××
(連結)
移転損益を企業会計基準第 22 号「連結財務諸表に関する会計基準」に基づいて、未実現利益の消去に準じて処理する。
(ⅱ)分離先:関連会社
(個別)
受け取った現金等の財産は、原則として時価により計上する。移転した事業の株主資本相当額との差額は移転損益として認識する。
仕訳
現金等 ×× / 移転事業 ××
移転損益 ××
(連結)
移転損益を企業会計基準第 16 号「持分法に関する会計基準」に基づいて未実現利益の消去に準じて処理する。
(ⅲ)分離先:その他
受け取った現金等の財産は、原則として時価により計上する。移転した事業の株主資本相当額との差額は移転損益として認識する。
仕訳
現金等 ×× / 移転事業 ××
移転損益 ××
(vol.82へ続く)