かいけいがく vol.93 - 包括利益 Part.1 -
(vol.92から続く)
今回は包括利益を解説していきます。
「純利益とどこが違うの?」
「P/LやB/Sとはどのような関係にあるの?」
そのような視点をもって読み進めて頂ければと思います。
まずは用語の定義を確認しましょう。
包括利益:特定期間の純資産の変動のうち、持分所有者*1との取引によらない部分
*1 株主や新株予約権者、連結財務諸表の場合は非支配株主も含む
親会社株主、非支配株主に係る部分がある
そもそも、包括利益が導入された目的は以下の項目があげられます。
・国際的な会計基準とのコンバージェンスにも資すること
・純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係*2を明示することで、
財務諸表の理解可能性と比較可能性を高めること
*2 ある期間における資本の増減(資本取引による増減を除く。)が当該期間の利益
と等しくなる関係
・投資家等の財務諸表利用者が企業全体の事業活動について検討するのに役立つことが
期待されること
では実際の取り扱いについてみていきましょう。
P/Lで表示される当期純利益との関係については以下のとおりです。
また、その他包括利益を構成する項目としては次のようなものがあります。
その他包括利益 - その他有価証券評価差額金
- 繰延ヘッジ損益
- 為替換算調整勘定
- 退職給に係る調整額
- 持分法適用会社のその他包括利益
・・・・
なお、持分法適用会社のその他包括利益のうち、持分相当額は一括して表示します。
原則として、その他包括利益の内訳項目は、税効果金額を控除後の金額で表示します。
ただし、税効果金額を控除前の金額で表示して一括して加減し、注記することも可能です。
組替調整額
当期純利益を構成する項目のうち、過去または当期にその他包括利益に含まれていた部分は、その他包括利益の内訳ごとに注記することになります。
これは包括利益の二重計上を防ぐのが目的です。
表示方式
・当期純利益を表示するP/Lと包括利益を表示する包括利益計算書(以下、C/I)を並立させる方式 (2計算書方式)
・当期純利益と包括利益の表示を1つの計算書(損益及び包括利益計算書)で行う方式(1計算書方式)
(参考)
(vol.94へ続く)