取締役等の報酬等として株式を無償交付する取引の会計処理 - vol.1 -

会社法の改正により、上場会社の取締役等に報酬等として株式を無償で交付する場合、

金銭の払込みを必要としないことが定められました。

 

上記の取引に関して、企業会計基準委員会から実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」が公表されています。

 

本稿ではこちらの実務対応報告に沿って、取締役等に報酬等として株式を無償で交付する取引(長いので、以下「本取引」としますm(__)m)についての会計処理について解説したいと思います。

 

実務対応報告では本取引を「事前交付型」と「事後交付型」の2つに分けて、

取引の実態に即した会計処理を適用することを示しています。

 

それぞれみていきます!

 

①事前交付型

 

 実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」第4項(7)

 

事前交付型」とは、・・・対象勤務期間の開始後速やかに、契約上の譲渡制限が付された株式の発行等が行われ、権利確定条件が達成された場合には譲渡制限が解除されるが、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得する取引をいう。

 

(1)新株を発行する場合

設例で確認しましょう。

 

例)前提条件は次のとおりとする。

・x1年6月に取締役5名に対して会社法第 202 条の 2 に基づく新株の発行を行うことを決議し、同年7月に割当を行った。

・取締役1名につき100株を交付

・譲渡制限あり、x4年7月に解除される

・取締役が自己都合で退任した場合、割り当てた株式は会社が無償で取得する。

・付与日における公正な評価単価:3,000円/株

・x3年6月までの退任見込み:1名、実際の退任:x3年3月期に1名

・払込資本は全額資本金とする。

・会社の決算期は3月期とする。

 

会計処理

 

■新株の発行時

(仕訳)

なし

 

■期末時 - x2年3月期

(仕訳)

報酬費用 450,000*1 / 資本金 450,000

*1 100株/人 × 3,000円/株 × (5−1)人 × 9/24 = 450,000円 

 

■期末時 - x3年3月期

(仕訳)

報酬費用 600,000*2 / 資本金 600,000

*2 100株/人 × 3,000円/株 × (5−1)人 × 21/24 - 450,000

= 600,000

 

■取締役退任に伴う自己株式の無償取得

(仕訳)

なし

 

■期末時 - x4年3月期

(仕訳)

報酬費用 150,000*3 / 資本金 150,000

*3 100株/人 × 3,000円/株 × (5−1)人 × 24/24 

- (450,000 + 600,000) = 150,000

 

取締役が退任したことにより、無償で交付した株式を没収する場合、

自己株式の無償取得として処理するので、自己株式の数のみの増加とします。

 

 (vol.2へ続く)