<Valuation>会社や事業に関する評価 - vol.5 -

WACCの算定において株主資本コストを求める必要があります。

株主資本コストは株主がある会社に投資する際に期待する利回りのことです。

こちらは、資本資産価格モデル、通称CAPM(Capital Asset Pricing Model)を用いて算定します。

 

E(r) = Rf + β × Rp

 

E(r):対象企業の期待投資リターン

Rf:リスクフリーレート

β:対象企業のベータ値

Rp:エクイティ・リスク・プレミアム

 

CAPMではリスクをほとんど負担することなく得られるリターンに、対象企業に投資することで追加的に得ることができるリターンを加えることで、株主の期待リターンを求めることになります。

 

通常リスクフリーレートは国債の利回りが利用されます。

エクイティ・リスク・プレミアムはマーケット全体に投資する際に、リスクフリーレートに対して追加で求めるリターンを指します。

 

ベータ値は投資対象の株式がマーケット全体の投資と比べて、どの程度、リスクがあるかを表す数値です。

 

例えば対象企業のベータ値が1.3、マーケットの株価の変動が6%とします。

その場合、投資しようとする会社の株価の変動は1.3×6%=7.8%と算定することができます。

 

もしも投資しようとする会社が上場していれば、マーケット全体の変動と比べることで、対象企業のベータ値を求めることができます。

 

ですが、そうでない場合、つまり投資対象の会社が上場していない場合等は、

事業が似ている会社のベータ値から対象となる会社のベータ値を推定することになります。

 

ここでレバードベータとアンレバードベータという言葉を確認します。

 

ベータ値は事業活動にかかるリスク(事業リスク)と借入金等の有利子負債を抱えることによるリスク(財務リスク)の2つから構成されます。

 

同じような事業を営んでいる場合でも、無借金の場合と多額の借入金がある場合とでは、財務上のリスクは異なります。

類似企業のベータ値から対象企業のベータ値を求める場合はこのような資本構成の違いを調整することになります。

 

レバードベータとアンレバードベータの関係は次のとおりです。

 

β(L) = β(U)×{1+(1−t)×D/E}

 

β(L):レバードベータ

β(U):アンレバートベータ

 

対象とする会社のベータ値を求める手順としては次のとおりです。

1.類似する会社のベータ値に関するデータを収集する。

2.1.のベータ値からアンレバードベータを求める。

3.対象となる会社の資本構成を参考にして、ベータ値を求める(リレバード)。