ドラマ『深夜食堂』原作:安倍夜郎

新宿にある深夜営業の食堂に集うのは、色々な事情をもった異色の面々。

わけあり、奇想天外、場所柄か、様々な人間が集まってくる。

豚汁定食しかメニューにはないけれど、できるものならつくる。

そんな営業方針らしい。

 

場面はほとんど、食堂内でのマスターや顧客同士の会話で成立しています。

それで全然、観ているものを飽きさせないよう上手く描かれています。

食を基点にしつつ、人間模様をうまく描いていて、言葉では表すことが難しい繊細微妙な機微を優れた背景描写と共に描いています。

 

この作品を総括すれば、次のように表せるでしょうか?

 

生きていれば、つらいことや苦しいこと、自分ではどうにもならないことの一つや二つあるもの。そんな時は食堂に集まり、みんなと酒でも飲み交わしながら語り合えば、すこしはその傷も言えるというもの。傷心、張り裂けそうな心がすこしだけ軽くなる。

 

こんなところでしょうか?

 

ドラマでは小林薫さんが演じるマスターをはじめ、不破万作さんが演じる飲んだくれの中年男性、ゲイバーのママ、お茶漬けシスターズ、松重豊さんが演じる任侠の竜ちゃん、安藤玉恵さんが演じる新宿ニューアートで活躍するストリッパーなど、個性的な面々がそれぞれの持ち前の演技力で物語に深みとコクを与えています。

 

独特の間、流れる雰囲気、ワンシーンがなんともいえない哀愁を帯びており、心にそっと沁み入ります。