金銭等の信託に係る会計処理 vol.2

以下では、企業会計基準委員会実務対応報告第23号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」に基づいてそれぞれの場合の会計処理について整理します。

 

- 委託者・受益者の会計処理 -

①.信託財産:金銭、委託者兼当初受益者:単数

 

(信託設定時)

信託財産となる金銭を適当な科目に振り替えます。

 

(期末時)

保有目的により、以下のように分類されます。

 

・運用目的

・満期保有目的

・その他

 

一般的な運用目的の場合、信託財産である金融資産・負債は金融商品会計基準等により、適正な評価額をB/S価額として、評価差額は当期の損益として処理します。

 

②.信託財産:金銭、委託者兼当初受益者:複数

 

(信託設定時)

信託財産となる金銭を有価証券又は合同運用の金銭の信託であることを示す科目に振り替えます。

 

(売却時・期末時)

有価証券または有価証券に準じて処理します。

合同運用の金銭の信託(投資信託を含む。)は取得価額をB/S価額とします。

 

(子会社・関連会社の判定)

次の受益者は連結会計基準に従い、信託を子会社として取り扱うことが適当とされます。

 

(1)すべての受益者の一致によって受益者の意思決定がされる信託

 

自己以外のすべての受益者が緊密な者又は同意している者であり、かつ、連結会計
基準第 7 項(2)の②から⑤(以下を参照)のいずれかの要件に該当する受益者

 

企業会計基準第 22 号「連結財務諸表に関する会計基準」 第7項

② 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者で自己が他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の企業の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること

③ 他の企業の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること

④ 他の企業の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているもの)の総額の過半について融資(債務の保証及び担保の提供を含む。以下同じ。)を行っていること(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)

⑤ その他他の企業の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること 

 

(2)信託行為に受益者集会における多数決による旨の定めがある信託

 

実務対応報告第23号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」Q3 3(2)

連結会計基準第 7 項で示す「他の企業の議決権」を、「信託における受益者の議決権」と読み替えて、連結会計基準第 7 項の企業に該当することとなる受益者

 

(3)信託行為に別段の定めがあり、その定めるところによって受益者の意思決定が行
われる信託

 

実務対応報告第23号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」Q3 3(3)

その定めにより受益者の意思決定を行うことができることとなる受益者

(なお、自己だけでは受益者の意思決定を行うことができないが、緊密な者又は同意している者とを合わせれば受益者の意思決定を行うことができることとなる場合には、連結会計基準第 7 項(2)の②から⑤までのいずれかの要件に該当する受益者) 

 

また、企業会計基準第 16 号「持分法に関する会計基準」第 5-2項の「他の企業の議決権」を、「信託における受益者の議決権」と読み替えて、当該基準に該当する受益者は信託を関連会社として取り扱います。

 

(vol.3へ続く)