かいけいがく vol.134 - 収益認識 Part.4 -

(4) 契約における履行義務に取引価格を配分する

ステップ2で識別した履行義務にステップ3で算定した取引価格を配分する手続きがステップ4です。

 

まずは、会計基準を確認しましょう。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準

65. それぞれの履行義務(あるいは別個の財又はサービス)に対する取引価格の配分は、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行う。

66. 財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの履行義務に取引価格を配分する。

 

独立販売価格の定義も確認しましょう。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準

9. 「独立販売価格」とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。 

 

なお、取引価格の履行義務への配分は取引開始日の独立販売価格の比率により行います。

こちらは簡単な設例で確認しましょう。

 

例)電気メーカーであるA社は家電製品Bを販売している。

家電製品Bには2年間の保守サービスCが付されている。

家電製品Bと保守サービスCは別個の財、サービスである。

それぞれの対価と独立販売価格は次のとおりである。

 

対価:家電製品Bは1,000、保守サービスCは200、合計:1,200

独立販売価格:家電製品Bは1,200、保守サービスCは300、合計:1,500

 

(計算)

家電製品Bと保守サービスCへの取引価格の配分は独立販売価格に基づいて行います。

 

家電製品B

1,200 × 1,200 / 1,500 = 960

 

保守サービスC

1,200 × 300 / 1,500 = 240

 

上記の家電製品Bに配分された960は製品の引き渡し時点で認識して、保守サービスCに配分された240は2年間にわたって認識します。

 

(5) 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する

 

最後のステップが履行義務の充足した時または充足するにつれて収益を認識する段階です。

 

このステップでは収益を一時に認識するか、それとも一定の期間にわたって認識するのかが問題となります。会計基準上は次の項目のいずれかを満たした場合、一定の期間にわたって収益を認識します。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」第38項

(1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること

(2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること

(3) 次の要件のいずれも満たすこと

① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること

② 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること 

 

一定期間にわたって収益を認識する場合、履行義務の充足に関する進捗度を見積もり、その進捗度に応じて収益を認識します。

 

一方、上記の要件を満たさない一時点で充足される履行義務については資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識します。 

 

ここで資産の支配という言葉について整理しておきます。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準

37. 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)をいう。 

 

支配の移転の検討する際には、例えば以下のような指標を考慮します。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」第40項

(1) 企業が顧客に提供した資産に関する対価を収受する現在の権利を有していること

(2) 顧客が資産に対する法的所有権を有していること

(3) 企業が資産の物理的占有を移転したこと

(4) 顧客が資産の所有に伴う重大なリスクを負い、経済価値を享受していること

(5) 顧客が資産を検収したこと 

 

以上となります。

 

収益認識に関する細かい論点は他にもありますが、概要については理解いただけるかと思います。様々な設例も公表されていますので、実務で迷われた際はこちらも合わせてご確認ください。

 

(參考)

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準

企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」

 

(vol.135へ続く)