不正史 vol.4 - 不正のトライアングル Part.2 -

小人閑居して不善をなす

小人間居為不善

- 『大学』

 

不正のトライアングルの2つ目の要素は機会です。

不正を実行しうる状況がある場合、それが誘因となって不正が起こってしまいます。

 

引用元:企業会計審議会「不正リスク対応基準」付録1

(1)企業が属する産業や企業の事業特性が、次のような要因により不正な財務報告にかかわる機会をもたらしている。 

・ 通常の取引過程から外れた関連当事者との重要な取引、又は監査を受けていない若しくは他の監査人が監査する関連当事者との重要な取引が存在する。
 ・ 重要性のある異常な取引、又は極めて複雑な取引、特に困難な実質的判断を行わなければならない期末日近くの取引が存在する。
 ・ 明確な事業上の合理性があるとは考えられない特別目的会社を組成している。
 ・ 業界の慣行として、契約書に押印がなされない段階で取引を開始する、正式な書面による受発注が行われる前に担当者間の口頭による交渉で取引を開始・変更する等、相手先との間で正当な取引等の開始・変更であることを示す文書が取り交わされることなく取引が行われうる。 

(2)経営者の監視が、次のような状況により有効でなくなっている。 

・ 経営が一人又は少数の者により支配され統制がない。 

(3)組織構造が、次のような状況により複雑又は不安定となっている。 

 ・ 異例な法的実体又は権限系統となっているなど、極めて複雑な組織構造である。

(4)内部統制が、次のような要因により不備を有している。 

 ・ 会計システムや情報システムが有効に機能していない。

 

これもわかりやすい例で言えば、次のようなに言い換えられます。

 

「経営者が稟議も取らずに勝手に取引を行っている」

経理担当者が一人でお金を扱っている」

「実施者の作業結果を誰もチェックしていない」

 

人間は条件付けで如何ようにも振る舞うものです。適切な条件設定をしてあげれば良好なパフォーマンスを発揮しますし、そういった視点を欠いた組織運営では各人の才能を最大限に発揮させることは難しいものです。

 

どんな人間が仕事に関与しているのか、どのような好みがあって、苦手なことがあって、どのような接し方、言葉のかけ方をすればパフォーマンスを発揮するのかを考慮すべきですが、大抵の場合は置き去りです。

 

「まずはやれ!!」

 

そのような乱暴な指揮命令で何とかしようとする管理者がいますが、全く求められる能力を発揮できているとは思えません。(が、それが多数派です。)

 

一人にあらゆる権限を集中する中央集権型の組織設計であっても牽制機能は実装しておく必要があります。どんな人間でも悪さはします。おそらく例外はありません。

 

私は韓非子はあまり好きではありませんが、組織運営にあたっては人間を信用しない設計・運用が求められるのかもしれません。