仮想通貨の会計処理 - vol.1 -

企業会計基準委員会から実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」が公表されています。本実務対応報告は仮想通貨の会計処理などについての取り扱いを定めたものです。こちらに関して解説してみます。

 

仮想通貨に関しての定義は資金決済法に定めがあります。本実務対応報告でも、こちらを参照しています。

 

資金決済に関する法律 第2条

5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」第4項

4. 本実務対応報告における用語の定義は、次のとおりとする。
(1) 「仮想通貨」とは、資金決済法第 2 条第 5 項に規定する仮想通貨をいう。

 

本実務対応報告では、①.仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨に関する会計処理、②.仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理の2パターンについて説明しています。

 

①.仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨に関する会計処理

(ⅰ)活発な市場が存在する場合

・B/S価額→市場価格に基づく価額

・帳簿価額と市場価格に基づく価額との差額→当期の損益

 

(ⅱ)活発な市場が存在しない場合

・B/S価額→取得価額

・処分見込額 < 取得価額→差額を損失として処理

(当該損失は戻入を行わない)

 

ここで活発な市場という言葉が登場しました。どういった意味でしょうか?

 

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」第8項

・・・活発な市場が存在する場合とは、・・・継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとする。 

 

また、複数の仮想通貨の取引所があった場合、どの市場価格を用いればいいのでしょうか?

 

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」第9項

・・・保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格(取引価格がない場合には、仮想通貨取引所の気配値又は仮想通貨販売所が提示する価格)を用いることとする。

 

期末評価時の市場価格には、取得または売却にかかる付随費用は含めません。

 

もし、仮想通貨交換業者が通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所を自分で運営している場合はどうすればいいでしょうか?

 

その場合、取引価格が公正な評価額であれば、期末の時価評価に利用してもよいとされます。

 

最後に、仮想通貨の売却についてです。

保有している仮想通貨を売却した場合の損益の認識はいつの時点で行うのでしょうか?

 

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」第13項

13. 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識する。 

 

(参考)

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」