排出量取引の会計処理 - vol.1 -

地球温暖化のための対策として、国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP3)において採択された国際条約が京都議定書です。

 

京都議定書では、京都メカニズムにおけるクレジット(排出クレジットを獲得して、排出量削減に充てることを想定した取引、第三者への販売のために排出クレジットを獲得する取引が見られます。2008年からは、試行排出量取引スキームが開始されています。

 

企業会計基準委員会は上記事項に関する実務上の対応を定める目的で、実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」を公表しています。

 

こちらについて、整理してみたいと思います。

 

(1)排出クレジット

京都議定書に由来する排出クレジットの性格として、以下の点が挙げられます。

 

京都議定書における国際的な約束を各締約国が履行するために用いられる数値であること

②国別登録簿(注1)においてのみ存在すること

③所有権の対象となる有体物ではなく、法定された無体財産権ではない

 

(注1)国別登録簿に関しては、以下の通り、法律で定められています。

地球温暖化対策の推進に関する法律 第43条

第四十三条 環境大臣及び経済産業大臣は、京都議定書第七条4に基づく割当量の計算方法に関する国際的な決定(以下「割当量の計算方法に関する国際的な決定」という。)に従い、割当量口座簿を作成し、算定割当量の取得、保有及び移転(以下「算定割当量の管理」という。)を行うための口座(以下「管理口座」という。)を開設するものとする。

 

排出クレジットは法定された財産権ではありませんが、取得や売却された際には有償で取引されますので、財産的価値を有し、会計上は無形固定資産に近い性格であると考えられます。

 

(2)会計処理

(ⅰ)投資の性格

企業がおこなう投資は大きく事業投資と金融投資に分けられます。この2つは期待される成果が異なります。

 

事業投資:キャッシュの獲得を目的とするための投資

金融投資:時価の変動を目的とした投資

 

(ⅱ)会計処理

・活発に取引される市場がない場合

企業が取引相手を探し、交渉した上で排出クレジットを引き渡すことにより、利益を獲得する事業投資に該当すると考えられます。

 

・活発に取引される市場がある場合

トレーディング目的の棚卸資産として、時価によりB/Sに計上して、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します。

 

(参考)

企業会計基準委員会 実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」