特別目的会社に対して不動産を譲渡した譲渡人の会計処理 - vol.1 -

特別目的会社(以下、SPC)を利用して不動産の流動化を行う場合の譲渡人の会計処理について、日本公認会計士協会より会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」が公表されています。

 

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第8条第7項

特別目的会社・・・については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者・・・に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従つて適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に資産を譲渡した会社等・・・から独立しているものと認め、・・・譲渡会社等の子会社に該当しないものと推定する。

 

流動化の対象となる不動産の売却の認識に関しては、不動産のリスクと経済的価値のほとんどすべてが特別目的会社に移転している場合に、売却の認識を行うリスク経済価値アプローチによります。

 

この際、リスクと経済的価値がほとんど全て移転しているかの判断にあたっては、形式的に行うのではなく、実質的な判断が求められます。例えば、買戻条件付きで譲渡している場合や譲渡人が不動産の管理を行っている場合は譲渡人の継続的な関与がある具体的な事例として列挙されています。

 

リスクと経済的価値が移転したかどうかの判定に当たっては、次の算式に基づいてリスク負担割合が5%以内であれば、リスクと経済的価値が移転しているものとして扱います。

 

(計算式)

リスク負担割合

= リスク負担の金額 ÷ 流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価

 

設例で確認してみましょう。

 

例)譲渡人であるX社は特別目的会社であるY社に所有する不動産を500万円で譲渡した。Y社は不動産の購入資金を金融機関からの借り入れ(490万円)とX社への出資証券の割当(10万円)により調達するものとする。Y社の毎期の収入と支出、借入利息と配当金は次の通りとする。

 

・収入:30万円、支出:20万円

・借入利息:5万円、配当金:5万円

 

(計算式)

リスク負担割合

= リスク負担の金額 ÷ 流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価

= 10万円 ÷ 500万円

= 2%

 

上記の設例では、リスク負担割合が2%(<5%)なので、リスクと経済的価値が移転しているものとみなして扱います。

 

もしも、不動産の調達資金を次のように調達したとしたら、どうでしょうか?

 

・借り入れ:400万円、X社への出資証券の割当:100万円

 

(計算式)

リスク負担割合

= リスク負担の金額 ÷ 流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価

= 100万円 ÷ 500万円

= 20%

 

この場合は不動産の売却ではなく、金融取引として扱います。

 

(vol.2へ続く)