条件付取得対価の会計処理 - vol.2 -
②.特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価
条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合とは、特定の株式又は社債の特定の日又は期間の市場価格に応じて当初合意した価額に維持するために、取得企業が追加で株式又は社債を交付する条項がある場合等をいう。
(要件)
・条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となる。
・その時価が合理的に決定可能となった時
(会計処理)
・追加で交付可能となった条件付取得対価を、その時点の時価に基づき認識する。
・企業結合日現在で交付している株式又は社債をその時点の時価に修正し、当該修正により生じた社債プレミアムの減少額又はディスカウントの増加額を将来にわたって規則的に償却する。
こちらも設例で確認しましょう!
例)
(前提条件)
・企業結合日:2022年4月
・取得企業:X社(決算期:3月)
・被取得企業Y社(決算期:3月)
・取得方法:株式交換
・のれんの償却期間:10年間
・条件付取得対価に関する情報:X社の株価が企業結合日1年後に、契約で決められた株価を下回ったときは、Y社株主に対して追加でX社株式を交付する条項が企業結合契約に含まれている。
・2023年4月において、X社の株価が契約で定めた株価を下回ったので、追加でX社株式を交付するものとする。
(会計処理)
1.株式を追加交付する場合
仕訳なし*1
*1 対価総額に変わりはなく、発行株式を増加させるのみである。
2.社債を追加交付する場合
・企業結合日:2022年4月
・取得企業:X社(決算期:3月)
・被取得企業Y社(決算期:3月)
・取得方法:株式交換
・Y社のB/S:諸資産1,000(時価1,200)、諸負債700
・対価として交付した社債:額面200、時価180、口数:5口
・2023年3月時点で、社債の時価総額が900未満の場合、当初合意した価額900を維持するため、X社はY社株主に追加で社債を交付するものとする。
・のれんの償却期間:10年間
・社債の取得価額と額面との差額:5年間にわたり均等償却
(会計処理)
2022年4月時点
・X社の個別上の処理
Y社株式 900 / 社債 900*2
*2 @180 × 5口 = 900
・X社の連結上の処理
2022年4月時点
諸資産 1,200 / 諸負債 700
のれん 400 Y社株式 900
2023年3月時点
・X社の個別上の処理
(社債の償却)
*3 (200 - 180)× 5口 ÷ 5年 = 20
・X社の連結上の処理
のれん償却 40 / のれん 40*4
*4 400 ÷ 10年 = 40
・社債の追加交付
仕訳なし*5
*5 当初交付した社債:5口、時価:@100、時価総額:@100×5口=500
追加交付する社債:(900 - 500)÷ @100 = 4口
追加交付した社債にかかる差額:(200 - 100) × 4口 = 400
当該差額は翌年度から償却する。
(参考)