資産除去債務に関する税効果会計の適用

資産除去債務について、有形固定資産の取得価額に加算された除去費用に関する減価償却費は、損金としては認められません。また、利息費用に関しても同様です。どちらとも、税務上、調整されることになります。

 

(仕訳イメージ)

計上時

有形固定資産 ×× / 対価     ××

            資産除去債務 ××

期末時

減価償却費 ×× / 減価償却累計額 ××

利息費用 ×× / 資産除去債務 ××

 

例えば、有形固定資産の帳簿価額が10,000、耐用年数が10年、除去費用相当が1,000、割引率を3%とするとします。

(仕訳)

計上時

有形固定資産 11,000 / 対価     10,000

             資産除去債務   1,000

 

期末時

減価償却費 1,100 / 減価償却累計額 1,100*1

*1 11,000 ÷ 10 = 1,100

 

利息費用 30 / 資産除去債務 30*2

*2 期首の資産除去債務の残高 × 割引率

= 1,000 × 3%

= 30

 

上記の計算の内、除去費用1,000にかかる減価償却費100と利息費用30は損金に算入されません。よって、別表4で加算(留保)することになります。

 

このように、将来の課税所得を増加させることになるので、将来加算一時差異に該当します。一方、負債計上されている資産除去債務については、対象となる有形固定資産を除去したタイミングで一括して減算(認容)するので、将来減算一時差異に該当します。

 

企業会計基準適用指針第 28 号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」 第4項

(4) 「財務諸表上の一時差異」とは、個別財務諸表において生じる一時差異のことをいい、将来減算一時差異又は将来加算一時差異に分類される。

① 「将来減算一時差異」とは、財務諸表上の一時差異のうち、当該一時差異が解消する時にその期の課税所得を減額する効果を持つものをいう。

② 「将来加算一時差異」とは、財務諸表上の一時差異のうち、当該一時差異が解消する時にその期の課税所得を増額する効果を持つものをいう。

 

上記の設例を使って確認します。説明の都合上、有形固定資産本体の金額は無視します。また、実効税率は30%とします。

 

(仕訳)

計上時

有形固定資産 1,000 / 資産除去債務 1,000

繰延税金資産 300   繰延税金負債 300*3

*3 1,000 × 30% = 300

 

期末時

減価償却費 100 / 減価償却累計額 100

繰延税金負債 30  法人税等調整額 30*4

*4 100 × 30% = 30

 

利息費用 30   /  資産除去債務 30

繰延税金資産 9    法人税等調整額 9*5

*5 30 × 30% = 9

 

なお、計上された繰延税金資産については企業会計基準適用指針第 26 号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に基づいて回収可能性を判断して、回収可能性が認められたものが資産計上されることになります。

 

(参考)

企業会計基準適用指針第 28 号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」 

企業会計基準適用指針第 26 号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」