資本連結 - vol.5 -
7.子会社の時価発行増資
時価発行増資とは、会社が資金調達を行う際、発行価格を市場価格(時価)に近い価格で行う資金調達の形です。ここでは、子会社が時価発行増資を行った際の会計処理についてまとめておきます。
まずは先にルールを確認しておきましょう!
企業会計基準第 22 号「連結財務諸表に関する会計基準」第30項
30. 子会社の時価発行増資等に伴い、親会社の払込額と親会社の持分の増減額との間に差額が生じた場合(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限る。)には、当該差額を資本剰余金とする。
日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」第47項
47.子会社の時価発行増資等に伴い、親会社の引受割合が増資前の持分比率と異なるために増資後の持分比率に変動が生ずる場合、一旦、従来の持分比率で株式を引き受け、その後に追加取得(親会社の持分比率が増加する場合)又は一部売却(親会社の持分比率が減少する場合)を行ったものとみなす。
こちらも設例で確認します。
例)P社はA社の株式60%をx1年4月1日に66,000で取得した。支配獲得時点のA社のB/Sは以下のとおりである。支配獲得時点における土地の評価額は6,000である。それ以外の資産については簿価と時価に差異はないものとする。また、税効果は考慮外とする。のれんの償却期間は5年とする。P社、A社ともに決算月は3月とする。x2年3月期のA社の当期純利益は5,000である。A社の発行済株式総数は1,000(1株あたり@100)とする。
x2年4月1日にA社はP社に対して株式250株を1株あたり120で割り当てた。x2年4月1日時点のA社のB/Sは次の通りである。
(仕訳)
x1年4月1日
・A社修正仕訳
土地 1,000 / 評価差額 1,000
・連結修正仕訳
資本 100,000 / A社株式 66,000
評価差額 1,000 非支配株主持分 40,400*1
のれん 5,400
*1 (100,000+1000)× 40% = 40,400
のれん償却 1,080 / のれん 1,080*2
*2 5,400 ÷ 5 = 1,080
非支配株主損益 2,000 / 非支配株主持分 2,000*3
*3 5,000 × 40% = 2,000
x2年4月1日
・時価発行増資に関する仕訳
一旦は従来の持株比率で株式を引き受けたものとする。
資本金 30,000 / A社株式 30,000*4
A社株式 12,000 / 非支配株主持分 12,000*5
*4 250株 × @120 = 30,000
*5 30,000 × 40% = 12,000
時価発行増資の結果、P社と非支配株主の持分比率は次のようになります。
P社:60% → 68%*6
非支配株主:40% → 32%
*6 (600+250)÷(1,000+250) = 68%
ここで、P社が非支配株主から持分を追加取得したと考えます。
非支配株主持分 8,480*7 / A社株式 12,000
資本剰余金 3,520
*7 (100,000+5,000+1,000) × 8%(持分の減少分) = 8,480
時価発行増資により、親会社の持分が減少する場合も、一部売却と同様に考えます。
なお、上記の結果、資本剰余金がマイナスの残高になるときは、利益剰余金から減額して、資本剰余金の残高をゼロとします。
企業会計基準第 22 号「連結財務諸表に関する会計基準」第30-2項
30-2. ・・・資本剰余金が負の値となる場合には、連結会計年度末において、資本剰余金を零とし、当該負の値を利益剰余金から減額する。
(参考)
日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」