税率差異の概要 - vol.1 -
税効果会計を適用した場合に注記することが求められる項目として税率差異があります。
第八条の十二 前条の規定により税効果会計を適用したときは、次の各号に掲げる事項を注記しなければならない。
・・・
二 当該事業年度に係る法人税等の計算に用いられた税率(以下この条において「法定実効税率」という。)と法人税等を控除する前の当期純利益に対する法人税等(税効果会計の適用により計上される法人税等の調整額を含む。)の比率(以下この条において「税効果会計適用後の法人税等の負担率」という。)との間に差異があるときは、当該差異の原因となつた主な項目別の内訳
つまり、税率差異とは法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率(以下、法人税負担率)の間の差異を指します。
こちらについて、より詳細に解説します。
では何故、法定実効税率と法人税負担率の間に差異が生じるのでしょうか?こちらは、簡単な設例で確認しましょう。
例)
・A社の当期純利益は1,000
・賞与引当金500を計上している。
・法定実効税率は30%
(計算)
(1)税効果会計を適用しない場合
当期純利益1,000に対して、法人税等は次のように計算されます。
法人税等 = (1,000+500) × 30%
= 450
よって、法人税負担率は次のように計算されます。
法人税負担率 = 450 ÷ 1,000
= 45%
上記のように税効果会計を適用しない場合、法定実効税率30%と法人税負担率45%に差異が生じます。
(2)税効果会計を適用する場合
賞与引当金500は将来減算一時差異に該当するので、税効果会計を適用した場合、次のような仕訳が計上されます。
(仕訳)
この場合、法人税負担率は次のように計算できます。
法人税負担率 = (法人税等+法人税等調整額) ÷ 税引前当期純利益
= (450 − 150) ÷ 1,000
= 300 ÷ 1,000
= 30%
税効果会計を適用した場合、法定実効税率と法人税負担率は一致することになります。しかし、税効果会計の適用対象とならない永久差異等の影響により、法定実効税率と法人税負担率の差異が生じます。
この差異の内容を開示することが求められているわけです。