電子記録債権の会計処理

電子記録債権の会計処理については、企業会計基準委員会から実務対応報告第 27 号「
電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い」が公表されています。本稿では当該実務対応報告の内容に沿って、解説したいと思います。

 

まずは電子記録債権の定義について確認しましょう。

電子記録債権法 第2条 第1項

この法律において「電子記録債権」とは、その発生又は譲渡についてこの法律の規定による電子記録(以下単に「電子記録」という。)を要件とする金銭債権をいう。

 

電子記録債権法で定義される電子記録債権は、会計上の定義としてもそのまま採用されます。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第15条

第十五条 次に掲げる資産は、流動資産に属するものとする。

・・・

二の二 通常の取引に基づいて発生した電子記録債権電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。・・・)

 

電子記録債権は手形債権に準じて、通常の債権とは区分して、「電子記録債権」等の勘定科目で表示します。

電子記録債権を譲渡した際に保証記録を行っている場合、財務諸表にその旨、注記します。

 

(会計処理)

例1)商品1,000を掛売上して、発生記録により電子記録債権を計上、その後、決済

仕訳

売掛金 1,000 / 売上 1,000

電子記録債権 1,000 / 売掛金 1,000

現預金 1,000 / 電子記録債権 1,000

 

例2)商品2,000を掛仕入して、発生記録により電子記録債務を計上、その後、決済

仕訳

仕入 2,000 / 買掛金 2,000

買掛金 2,000 / 電子記録債務 2,000

電子記録債務 2,000 / 現預金 2,000

 

例3)貸付金3,000を貸付、その後、決済(利息の処理は考慮外とする)

仕訳

貸付金 3,000 / 現預金 3,000

(発生記録により電子記録債権が発生した時)

仕訳なし*1

現預金 3,000 / 貸付金 3,000

*1 下記参照

実務対応報告第 27 号「電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い」脚注2

貸付金や借入金等については、現行の企業会計上、証書貸付や手形貸付等に区分掲記せずに「貸付金」「借入金」等として表示していることから、それらに関連して電子記録債権が発生しても手形債権に準じて取り扱うため、科目は振り替えないことになる。また、手形債権が指名債権とは別に区分掲記される取引であっても、重要性が乏しい場合には、電子記録債権を区分掲記ではなく手形債権に含めて表示することができる。

 

例4)営業取引外で電子記録債権を発生させた場合

ここでは固定資産を5,000で売却して電子記録債権を発生させて、その後、決済

仕訳

未収入金 5,000 / 固定資産 5,000

営業外電子記録債権 5,000 / 未収入金 5,000

現預金 5,000 / 営業外電子記録債権 5,000