資産管理会社&IPO - 相続税法の観点から -

財産評価基本通達185において、純資産価額は次のように定義されています。

 

(計算式)

純資産価額 = 各資産の合計額 − 各負債の合計額 − 評価差額に対する法人税額等に相当する金額

 

上記の計算式のうち、「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」については次のとおりに記述があります。

財産評価基本通達186-2

185*1の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の(1) の金額から(2)の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に37%(法人税(地方法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合)を乗じて計算した金額とする。

 

上記のルールを基にIPOを予定する会社が資産管理会社を利用すると相続税を適切に節税することができます。

 

具体的な数値例で考えてみましょう。

例)オーナー社長Aさんは所有しているB社の株式を新たに設立した資産管理会社C社に売却したとします。その後、B社の事業は順調に成長して、証券取引所に上場したとします。

前提となる数字などは次のとおりとします。

・C社へのB社株式の売却額:2億円

・B社の上場時点の評価額:20億円

・B社株式の売買に必要な資金は借り入れにより調達

 

(計算)

B社株式を売買した直後のC社のB/Sは次の通りです。

(簡略化のため、設立のための資本金は無視します。)

 

その後、B社が上場した後のC社のB/Sは次のとおりです。

 

ですが、財産評価基本通達186−2の適用を考えると、C社のB/Sは次のとおりに評価できます。

この時の法人税等控除の金額は次のとおりに求めることができます。

法人税等控除

= 含み益 × 37%

= (20億円 − 2億円) × 37%

= 18億円 × 37%

= 6.66億円

 

相続財産の評価の観点からみると、オーナー社長Aさんが直接にB社株式を保有していたときと比べて、法人税等控除の分だけ評価額を下げることができます。

 

有用な方法ですが、こちらは資産管理会社に株式を売却する際の評価額がポイントになります。この時、評価額が高いと、売却代金を工面することが難しいですし、上場した後の評価額との差額がそれほど生じない場合、”うまみ”が少ないかもしれません。

 

ですので、上記の方法を利用する場合、株価が低いうちに利用するのがポイントになります。

*1:純資産価額