かいけいがく vol.18 - 有価証券 Part.5 -

(vol.17から続く)

 

前回までに保有目的の区分ごとの会計処理についてみてきました。

 

ここで、有価証券の減損処理について解説したいと思います。

 

減損処理??ナニソレ??、という方もいるでしょうから、まずはルールを確認しましょう!

 

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第20条〜22条

 

20.満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。


21. 市場価格のない株式等については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。


22. 第 20 項及び第 21 項の場合には、当該時価及び実質価額を翌期首の取得原価とする。

 

有価証券は価格が上がるすることもあれば下がるすることもあります。もし評価額が著しく下がった場合には、その事実を適切に評価に反映させるために損失を計上します。

 

では、「著しい下落」とはどの程度の下落をいうのでしょうか?

 

会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第91条

 

・・・時価のある有価証券の時価が「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化できるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。

この場合には、合理的な反証がない限り、時価が取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないため、減損処理を行わなければならない。・・・

 

なるほど。

時価が取得価額に対して50%程度以上、落ち込んだ場合は減損処理、つまり損失を計上するということですね。

 

ではそれ以外の場合はどうでしょうか?

 

会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第91条

 

・・・上記以外の場合には、状況に応じ個々の企業において時価が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設け、当該基準に基づき回復可能性の判定の対象とするかどうかを判断する。  ・・・

 

各々の会社が合理的な基準を設定して、回復可能性があるかを判定するということですね。

 

ちなみに、30%未満の場合は一般的に該当しないと考えます。

 

会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第91条

 

なお、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられる。  

 

実際の問題としては、回復の可能性の判断が難しいです。

 

会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第91条

 

・・・時価の下落について「回復する見込みがある」と認められるときとは、株式の場合、時価の下落が一時的なものであり、期末日後おおむね1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準にまで回復する見込みのあることを合理的な根拠をもって予測できる場合をいう。

この場合の合理的な根拠は、個別銘柄ごとに、株式の取得時点、期末日及び期末日後における市場価格の推移及び市場環境の動向、最高値・最安値と購入価格との乖離状況、発行会社の業況等の推移等、時価下落の内的・外的要因を総合的に勘案して検討することが必要である。

ただし、株式の時価が過去2年間にわたり著しく下落した状態にある場合や、株式の発行会社が債務超過の状態にある場合又は2期連続で損失を計上しており、翌期もそのように予想される場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められない。

他方、債券の場合は、単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落した場合であっても、いずれ時価の下落が解消すると見込まれるときは、回復する可能性があるものと認められるが、格付の著しい低下があった場合や、債券の発行会社が債務超過や連続して赤字決算の状態にある場合など、信用リスクの増大に起因して時価が著しく下落した場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められない。


上記の結果、回復する見込みがあると判断された銘柄以外の有価証券については、減損処理を行わなければならない。
また、その他有価証券について、「著しく下落した」ときを判断するにあたっての、時価が取得原価に比べ50%程度以上下落したかどうか、及び時価の下落率がおおむね30%未満であるかどうかの検討に際しては、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることを妨げない。この期末前1か月の市場価格の平均とは、原則として期末日以前1か月の各日の終値終値がなければ気配値)の単純平均値とする。
当該方法の適用は、株式、債券等の有価証券の種類ごとに行うことができるが、毎期継続して適用することが要件となる。  

 

以上が市場価格のある株式等の場合です。

市場価格のない株式等の場合には別のルールがあります。

 

会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第92条

 

市場価格のない株式等は取得原価をもって貸借対照表価額とするとされている(金融
商品会計基準第19項)が、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)しなければならない(金融商品会計基準第21項)。

財政状態とは、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額をいい、財政状態の悪化とは、この1株当たりの純資産額が、当該株式を取得したときのそれと比較して相当程度下回っている場合をいう。

なお、この際に基礎とする財務諸表は、決算日までに入手し得る直近のものを使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していればその事項も加味する。

通常は、この1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額が当該株式の実質価額であるが、会社の超過収益力や経営権等を反映して、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合もある。


また、市場価格のない株式等の実質価額が「著しく低下したとき」とは、少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合をいう。

ただし、市場価格のない株式等の実質価額について、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額をしないことも認められる。  

 

長くなりましたが、いくつか事例で確認しましょう。

 

例)当社は以下の株式を保有している。

 

銘柄:O社

保有株数:1,000株

保有目的区分:その他有価証券

取得価額:100,000

期末時評価額:40,000

評価方法:全部純資産評価法

(簡略化のため、税効果の影響は考慮しない。)

 

(仕訳)

有価証券評価損*1 60,000 / その他有価証券 60,000

*1(40,000 - 100,000)/ 100,000 = △60% の下落となるので、著しい下落に該当する。よって減損処理を行う。

 

減損処理後の取得価額:40,000

 

このように、評価額が著しく落ち込んだ場合には評価損を計上します。

 

(vol.19へ続く)