かいけいがく vol.17 - 有価証券 Part.4 -

(vol.16から続く)

 

最後にその他有価証券について説明します。

 

(定義)

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

第八条22

この規則において「その他有価証券」とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいう。 

 

前回までに説明した、どの保有区分にも当てはまらない有価証券がその他有価証券に分類されます。

 

(会計処理)

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第18条

売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(以下「その他有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理する。


(1) 評価差額の合計額を純資産の部に計上する。


(2) 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。

なお、純資産の部に計上されるその他有価証券の評価差額については、税効果会計を適用しなければならない。  

 

(1)の方法を全部純資産直入法、(2)の方法を部分純資産直入法と呼びます。

 

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第77条〜79条

77. その他有価証券の時価は投資者にとって有用な投資情報であるが、その他有価証券については、事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり、評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切ではないと考えられる。
78. また、国際的な動向を見ても、その他有価証券に類するものの評価差額については、当期の損益として処理することなく、資産と負債の差額である「純資産の部」に直接計上する方法や包括利益を通じて「純資産の部」に計上する方法が採用されている。
79. これらの点を考慮して、本会計基準においては、原則として、その他有価証券の評価差額を当期の損益として処理することなく、税効果を調整の上、純資産の部に記載する考え方を採用した(第 18 項参照)。

なお、評価差額については、毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとした。

したがって、期中に売却した場合には、取得原価と売却価額と
の差額が売買損益として当期の損益に含まれることになる。  

 

時価評価を行いつつも、処分することに制約を伴う場合もあることから、評価差額は純資産の部に計上されることになります。

 

(仕訳)

例)M社株式を10,000で取得した。期末時点での評価額は12,000に上昇した。

当該株式はその他有価証券に区分するものとする。

(税効果の影響は考慮しないものとする)

 

取得時

その他有価証券 10,000 / 現金 10,000

 

期末日

全部純資産直入法

その他有価証券 2,000 / その他有価証券評価差額金 2,000

 

部分純資産直入法

その他有価証券 2,000 / その他有価証券評価差額金 2,000

 

例)N社株式を20,000で取得した。期末時点での評価額は12,000に下落した。

当該株式はその他有価証券に区分するものとする。

(税効果の影響は考慮しないものとする)

 

取得日

その他有価証券 20,000 / 現金 20,000

 

期末日

全部純資産直入法

その他有価証券評価差額金 8,000 / その他有価証券 8,000

 

部分純資産直入法

有価証券評価損 8,000 / その他有価証券 8,000

 

このように、部分純資産直入法の場合、評価損が生じる場合のみ、P/Lに評価損を計上します。

 

(vol.18へ続く)