かいけいがく vol.38 - 純資産 Part.2 -

(vol.37から続く)

 

株主資本以外

 株主資本以外の項目としては、大きく分けて以下のとおりです。

 

・評価・換算差額等

・株式引受権

新株予約権

 

評価・換算差額等

資産または負債を時価で評価した場合、評価差額を当期の損益としない場合等、純資産の部の株主資本以外の項目として計上されます。

 

例)その他有価証券を10,000で取得した。期末時点で12,000と評価された。

税効果の影響は考慮しない。

 

(仕訳)

取得

その他有価証券 10,000 / 現金 10,000

 

期末時

その他有価証券 2,000 / その他有価証券評価差額金 2,000

 

株式引受権

会社法第202条の2

 

第二百二条の二 金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従いその発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をするときは、第百九十九条第一項第二号及び第四号に掲げる事項を定めることを要しない。この場合において、当該株式会社は、募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 取締役の報酬等(第三百六十一条第一項に規定する報酬等をいう。第二百三十六条第三項第一号において同じ。)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第百九十九条第一項第三号の財産の給付を要しない旨
二 募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)

 

上記の会社法の改正を踏まえて、以下の実務対応報告が公表されています。

実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」

 

1. 2019 年 12 月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第 70 号。以下「改正法」という。)により、「会社法」(平成 17 年法律第 86 号)第 202 条の 2 において、金融商品取引法第 2 条第 16 項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないことが新たに定められた。

2. 本実務対応報告は、前項に記載した取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする場合における会計処理及び開示を明らかにすることを目的としている。  

15. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する契約を締結し、これに応じて企業が取締役等から取得するサービスは、第 6 項から第 8 項と同様にサービスの取得に応じて費用を計上し、対応する金額は、株式の発行等が行われるまでの間、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上する。

 

これを受けて、純資産の部に新たに株式引受権が設定されました。

 

例)以下の前提条件で、取締役に対して会社法第 202 条の 2 に基づく新株の発行を行うこととする契約を取締役と締結することを決議した。

(会社は3月決算とする。)

 

対象:取締役5名

割当数:取締役1名に対して1,000株

割当条件:2021年7月〜2024年6月までの職務の執行

付与日における公正な評価単価:2,000円/株

失効見込み:1名の退任に伴う失効

権利確定日における退任数は1名であった。

 

(仕訳)

2022年3月期

報酬費用 4,500,000 / 株式引受権 4,500,000*1

*1 2,000円/株 × 1,000株/名 × (10名 - 1名) × 9/36ヶ月 = 4,500,000

 

2023年3月期

報酬費用 6,000,000 / 株式引受権 6,000,000*2

*2 2,000円/株 × 1,000株/名 × (10名 - 1名) × 21/36ヶ月 - 4,500,000

  =6,000,000

 

2024年3月期

報酬費用 6,000,000 / 株式引受権 6,000,000*3

*3 *2 2,000円/株 × 1,000株/名 × (10名 - 1名) × 33/36ヶ月  

     - (4,500,000 + 6,000,000) = 6,000,000

 

2025年3月期

報酬費用 1,500,000 / 株式引受権 1,500,000*3

*3 *2 2,000円/株 × 1,000株/名 × (10名 - 1名) × 36/36ヶ月  

     - (4,500,000 + 6,000,000 + 6,000,000) = 1,500,000

 

割当日において新株を発行するとします。

実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」

 

16. 割当日において、新株を発行した場合には、株式引受権として計上した額(前項参照)を資本金又は資本準備金に振り替える。

 

(仕訳)

式引受権 18,000,000 / 資本金 18,000,000

 

新株予約権

会社法第2条第21項

 

新株予約権 株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。 

 

例えば、対象となる株式が1,200の時点で、権利行使価額が1,000円の新株予約権を権利行使した場合、その差額200(1,200-1,000)が利益となります。

 

(vol.39へ続く)