かいけいがく vol.92 - 1株あたり情報 Part.3 -

(vol.91から続く)

 

新株予約権社債

 

例)前提条件を次のとおりとする。

当期純利益:500,000,000円

転換社債型新株予約権付社債(一括法で処理されている。)

・転換価格:500円

社債発行額(額面):400,000,000円
(すべて転換されたと仮定した場合の普通株式の発行数:800,000株)

・×1年度の支払利息:20,000,000円

法人税等の法定実効税率:30%

普通株式期中平均株式数:25,000,000株

 

(計算式)

1株あたり当期純利益 = 500,000,000円 ÷ 25,000,000株

           = 20円/株

 

転換社債型新株予約権付社債

当期純利益調整額:14,000,000*1円 ÷ 普通株式増加数:800,000株 

= 潜在株式調整後1株当たり当期純利益調整額:17.5円/株

*1 20,000,000 × (1-0.3) = 14,000,000

  利払いが不要となるので、税金の影響を除いた金額が利益の調整項目となる

 

17.5円/株 < 20円/株 となるので、希薄化効果を有する。

 

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

=(500,000,000+14,000,000)÷(25,000,000+800,000)

=19.9円/株

 

新株予約権

 

最初にルールを確認します。

企業会計基準第2号 「1株当たり当期純利益に関する会計基準

 

26. 第25項にいう普通株式増加数は、下記の(1)により算定された普通株式数から、(2)により算定された普通株式数を差し引いて算定する。なお、ワラントが期中に消滅、消却又は行使された部分については、期首又は発行時から当該消滅時、消却時又は行使時までの期間に応じた普通株式数を算定する。

(1) 希薄化効果を有するワラントが期首又は発行時においてすべて行使されたと仮定した場合に発行される普通株式

(2) 期中平均株価にて普通株式を買い受けたと仮定した普通株式
ワラントの行使により払い込まれると仮定された場合の入金額を用いて、当期にワラントが存在する期間の平均株価にて普通株式を買い受けたと仮定した普通株式数を算定する。

 

例)前提条件を次のとおりとする。

当期純利益:500,000,000円

・行使価格:10円

・発行数:2,000,000個

(すべて行使されたと仮定した場合の普通株式の発行数:2,000,000株)

普通株式の期中平均株価:40円

普通株式期中平均株式数:25,000,000株

 

(計算式)

1株あたり当期純利益 = 500,000,000円 ÷ 25,000,000株

           = 20円/株

 

新株予約権

新株予約権は期首時点ですべて発行されたとします。

その場合の普通株式増加数は次のとおりです。

2,000,000 - 2,000,000×10÷40*2 = 1,500,000株

*2 平均株価にて買い受けたと仮定した場合の普通株式

 

また、以下の算式でも同様の結果が得られます。

発行時における普通株式増加数 × {(期中平均株価-行使価格)÷ 期中平均株価}

=2,000,000 × (40-10)/40 = 1,500,000株

 

期末又は行使時までの期間:365日となるので、対応する期間に応じた

普通株式増加数は次のとおりです。

 

1,500,000株 × 365/365 = 1,500,000株

 

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

= 500,000,000円 ÷ (25,000,000+1,500,000) 株

= 18.8円/株

 

 

もしも、複数の潜在株式が存在する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益に与える影響が大きい項目から順に計算していって、最大希薄化を有する潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定することになります

 

(vol.93へ続く)