かいけいがく vol.138 - 時価 Part.3 -
②.インカムアプローチ
企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」第5項
(2) インカム・アプローチ
インカム・アプローチとは、利益やキャッシュ・フロー等の将来の金額に関する現在の市場の期待を割引現在価値で示す評価技法をいう。当該評価技法には、例えば、現在価値技法やオプション価格モデルが含まれる。
代表的な手法であるDCF法(Discounted Cash Flow method)について取り上げます。
DCF法は将来のキャッシュフローの現在価値を足し合わせることで企業の評価を行う方法です。
念の為、現在価値の考え方について復習しておきましょう。
例えば、銀行口座に100万円を預けるとします。預金金利は年3%とします。
この時、1年後に預金残高はいくらになるでしょうか?
(計算)
1年後の預金残高 = 100万円 + 100万円 × 3% =103万円
預け入れた残高に預金金利を乗じることで1年後の残高を求めることができます。
今度は、1年後に100万円となるには、いくらの金額を預け入れればいいのかについて考えてみます。金利は同じ年3%とします。この時、預け入れる金額をとりあえず、xとします。
(計算)
x + x × 3% = 100万円
⇔ x × (1+3%) = 100万円
⇔ x × (1.03) = 100万円
⇔ x = 100万円 ÷ 1.03
x ≒ 97万円
このように、将来の金額を現在の価値に換算する計算が現在価値計算です。
この考え方を企業価値の評価に利用したのがDCF法です。
簡単な設例で確認します。
例)将来のキャッシュ・フローは今後、5年で毎年200ずつ発生するとします。
割引率は3%とします。6年目以降は考慮しないものとします。
(計算)
現在価値 = 200 ÷ 1.03 + 200 ÷ (1.03)^2 + 200 ÷ (1.03)^3
+ 200 ÷ (1.03)^4 + 200 ÷ (1.03)^5
≒ 915
今回は話を簡略化するために、6年目以降のキャッシュ・フローや割引率の設定の話を省略しましたが、実際の取引のときにはそれらをどのように考えるのかが重要となります。
③.コスト・アプローチ
企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」第5項
(3) コスト・アプローチ
コスト・アプローチとは、資産の用役能力を再調達するために現在必要な金額に基づく評価技法をいう。
こちらは代表的な時価純資産法について取り上げます。
時価純資産法は資産の時価評価、負債の網羅性等を考慮した純資産価額で企業価値を評価します。
例)資産:1,000、負債:600、資産のうち、土地の含み益が200あるとします。
(計算)
純資産価額 = 1,000 + 200 ー 600 = 600
(vol.139へ続く)