特別目的会社に対して不動産を譲渡した譲渡人の会計処理 - vol.2 -

次に不動産にかかる信託受益権に関する会計処理についてです。

まず、信託受益権とは何でしょうか?、先に定義を確認しておきましょう。

信託法 第2条第7号

この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。

 

なお、信託については以前に書いてありますので、ご興味があればそちらを参照ください。

 

tandonch.hatenablog.com

 

・会計処理

信託受益権の会計処理についても、不動産の譲渡と同様にリスク経済価値アプローチにより、リスクと経済的価値のほとんど全てが移転したと認められる場合に、消滅の認識を行うことになります。

 

(ⅰ)質的に単一な信託受益権に分割されている場合

リスクと経済価値が含まれる信託受益権について、他の物に移転した部分は売却取引として扱います。

 

(ⅱ)質的に異なる信託受益権に分割されている場合

優先、劣後の受益権のように質的に異なるものに分割されている場合、他の者に移転しているときに限り、譲渡人が保有する信託受益権部分を除き、売却取引として扱います。

 

こちらは設例で確認しましょう。

 

例)譲渡人A社は信託銀行B社に所有している不動産500(時価600)を信託する。信託銀行は優先、劣後の信託受益権をA社に対して交付する。A社は特別目的会社C社に優先信託受益権を580(時価相当)で売却する。A社は継続して劣後信託受益権20(時価相当)を保有する。

 

(計算式)

リスク負担割合

= リスク負担の金額 ÷ 流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価

= 20 ÷ 600

≒ 3.33%

 

この場合、リスクと経済価値がほとんど全て特別目的会社を通じて他の者に移転しているとみなして、売却取引として処理します。

 

(参考)

会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」