不正史 vol.5 - 不正のトライアングル Part.3 -

朱に交われば赤くなる

近朱必赤

- 『太子少傅箴』

 

不正のトライアングルの最後の要素は、姿勢・正当化です。

自分の不正を致し方ないことだと自分で肯定することです。

 

引用元:企業会計審議会「不正リスク対応基準」付録1

・ 経営者が、経営理念や企業倫理の伝達・実践を効果的に行っていない、又は不適切な経営理念や企業倫理が伝達されている。

 ・ 経営者と現任又は前任の監査人との間に次のような緊張関係がある。

 - 会計、監査又は報告に関する事項について、経営者と現任又は前任の監査人とが頻繁に論争している又は論争していた。

 - 監査上必要な資料や情報の提供を著しく遅延する又は提供しない。

 - 監査人に対して、従業員等から情報を得ること、監査役等とコミュニケーションをとること又は監査人が必要と判断した仕入先や得意先等と接することを不当に制限しようとしている。 

 

上記の内容は監査人と経営者との関係に着目していますが、これも具体的にはどんな場合が想定できるでしょうか?

 

「業績が落ちてるから仕方なく・・・」

「上司からの叱責が嫌だったから・・・」

「従業員のためには・・・」

 

どれも人情かもしれませんが、少しの緩みが後で大きなしっぺ返しとなって、多くの人を巻き込んだ惨事になってしまうこともあります。

 

厳しい言い方をすれば、自分の責任を外部へ転嫁する姿勢でもあります。でも、当事者ばかりを責めるのは恐らくナンセンスです。社会的な説明として、誰かの責任が求められるのかもしれませんが、個々人に理由を求めたところで、将来、同じことが起こってしまうのは必然です。

 

何か問題が起こった時には、「誰が?」ではなく、「どうして?」、「何で?」といったように大局的に、そもそもの原因にアプローチすることが求められます。大抵は組織の方法のドラスティックな変更が必要なのでしょうが、あまり期待は出来なさそうです・・・

 

以上の不正のトライアングルは理論としてはとても説得力があります。でも、優れた理論だけでは、現実に起きるトラブルが解決されることはありません。

 

過去も、今も、そしてこれから先も不正が発生することが想定されます。だとすれば、我々に今できることは何でしょうか?

 

それが過去の事例に学ぶこと、そして抑えるところは抑える。その2つがとても重要です。後者は気持ちの部分が大きいですが、前者は観察と分析が必要です。

 

(vol.6へ続く)