病院に関する会計 - vol.3 -

次は損益計算書についてです。

まずは目的について確認します。

病院会計準則 第28 損益計算書の作成目的
損益計算書は、病院の運営状況を明らかにするために、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して当期純利益を表示しなければならない。 

企業会計においては企業の経営成績を明らかにすることが目的ですが、病院の会計においては運営状況を明らかにすることが目的となります。

 

次に収益と費用の定義を確認します。病院会計準則において、収益と費用は次の通り、定義されています。

病院会計準則

第29 収益の定義 

収益とは、施設としての病院における医業サービスの提供、医業サービスの提供に伴う財貨の引渡し等の病院の業務に関連して資産の増加又は負債の減少をもたらす経済的便益の増加である。

第30 費用の定義
 費用とは、施設としての病院における医業サービスの提供、医業サービスの提供に伴う財貨の引渡し等の病院の業務に関連して資産の減少又は負債の増加をもたらす経済的便益の減少である。

 

上記で定義される収益と費用は発生主義に基づいて記録されることになります。

病院会計準則 第32 発生主義の原則
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。

 

損益計算書の区分・表示は次のとおりです。

+医業収益

ー医業費用

医業利益

+医業外収益

ー医業外皮用

経常利益

+臨時収益

ー臨時費用

税引前当期純利益

±法人税等(法人税、住民税及び事業税負担額)

当期純利益

 

(関係式)

医業収益 − 医業費用 = 医業利益

医業利益 + 医業外収益 − 医業外費用 = 経常利益

経常利益 + 臨時収益 − 臨時費用 = 税引前当期純利益

税引前当期純利益 ± 法人税等 = 当期純利益

 

病院の損益計算書に関して、留意すべき主な事項は次のとおりです。

・控除対象外消費税等の負担について

病院会計準則(注22)控除対象外消費税等負担額について
消費税等の納付額は、開設主体全体で計算される。病院施設においては開設主体全体で計算された控除対象外消費税等のうち、当該病院の費用等部分から発生した金額を医業費用の控除対象外消費税等負担額とし、当該病院の資産取得部分から発生した金額のうち多額な部分を臨時費用の資産に係る控除対象外消費税等負担額として計上するものとする。 

開設主体全体で控除対象外消費税等を計算して、病院の負担に属する金額を病院の損益計算書上、費用として計上します。

 

・本部費の配賦について

病院会計準則(注23)本部費の配賦について
病院が本部を独立の会計単位として設置するか否かは、各病院の裁量によるが、本部会計を設置している場合には、医業利益を適正に算定するため、医業費用に係る本部費について適切な基準によって配賦を行うことが不可欠である。したがって、この場合には、医業費用の性質に応じて適切な配賦基準を用いて本部費の配賦を行い、その内容を附属明細表に記載しなければならない。 

本部を独立の会計単位として設置している場合、本部費については適切な配賦基準に応じて配賦することが求められます。

 

・納付すべき税額について

病院会計準則(注24)当期純利益について 

開設主体が課税対象法人である場合には、納付すべき税額は、開設主体全体で計算される。したがって、当期の法人税額等として納付すべき額に税効果会計適用によって計算された税金等調整額を加減した金額のうち、当該病院の利益から発生した部分の金額を、法人税、住民税及び事業税負担額として計上するものとする。 

納付すべき税額は開設主体全体で計算します。そのうち、病院の利益から生じた金額を法人税、住民税及び事業税負担額として計上します。

 

(vol.4へ続く)