かいけいがく vol.33 - 退職給付 Part.1 -
(vol.32から続く)
今回からは退職給付についての解説をしていきます。
退職給付は制度と会計処理をあわせて押さえるようにしましょう。
一見、複雑な処理にみえますが、ひとつひとつの計算は難しいわけではありません。
迷ったときは自分が今、何をしているのか、どこの論点を扱っているのかを確認してください。
3. 本会計基準は、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付(退職給付)の会計処理に適用する。 ・・・
以下のように整理できます。
退職給付:従業員等が労働サービスを提供したことに対する報酬の後払い
労働サービスの支払いを将来、従業員等が退職した際に後払いすることを帳簿上、どのように表現するのかについての会計処理が退職給付というわけです。
大きく2つの制度に分かれます。
4. 「確定拠出制度」とは、一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度をいう。
5. 「確定給付制度」とは、確定拠出制度以外の退職給付制度をいう。
それぞれ、1つずつみていきましょう!!
・確定給付制度
13. 退職給付債務(第 16 項参照)から年金資産の額(第 22 項参照)を控除した額(以下「積立状況を示す額」という。)を負債として計上する。
ただし、年金資産の額が退職給付債務を超える場合には、資産として計上する。
6. 「退職給付債務」とは、退職給付のうち、認識時点までに発生していると認められる部分を割り引いたものをいう。
7. 「年金資産」とは、特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき積み立てられた、次のすべてを満たす特定の資産をいう。(1) 退職給付以外に使用できないこと
(2) 事業主及び事業主の債権者から法的に分離されていること
(3) 積立超過分を除き、事業主への返還、事業主からの解約・目的外の払出し等が禁止されていること
(4) 資産を事業主の資産と交換できないこと
39. 個別財務諸表上、所定の事項については、当面の間、次のように取り扱う。
(1) 第 13 項にかかわらず、個別貸借対照表上、退職給付債務に未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を加減した額から、年金資産の額を控除した額を負債として計上する。ただし、年金資産の額が退職給付債務に未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を加減した額を超える場合には、資産として計上する。
(3) 第 27 項にかかわらず、個別貸借対照表に負債として計上される額(本項(1)参照)については「退職給付引当金」の科目をもって固定負債に計上し、資産として計上される額(本項(1)参照)については「前払年金費用」等の適当な科目をもって固定資産に計上する。
確定給付のB/Sの計上額は以下のとおりです。
退職給付引当金 = 退職給付債務 - 年金資産
± 未認識過去勤務費用 ± 未認識数理計算上の差異
けっこう、わかりづらいですね (-_-;)
とりあえず、未認識過去勤務費用と未認識数理計算上の差異の説明はあとにして、
先に退職給付債務と年金資産の説明をしますね。
退職給付債務はその時点までに発生している、つまり労働サービスを提供した分の報酬について支払われる額です。
支払う時点は将来時点なので、現在時点までその金額を割引計算します。
例)職員Aの将来の退職給付の支払額は10,000であると見積もられた。退職まであと10年、割引率は2%とする。
(計算式)
10,000 ÷ (1.02)^10 = 8,203
つまり現時点で計上される退職給付債務は8,203となります。
次は年金資産です。
退職給付制度のために積み立てられた資産のことで、それ以外の目的には使用できないことが明らかである必要があります。
退職給付債務と年金資産の差額を退職給付引当金とするわけです。
(未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務費用はここでは考えないことにします。)
例)退職給付債務の算定額は8,000、年金資産の金額は2,000とします。
その際の退職給付引当金の金額はいくらでしょうか?
(計算式)
退職給付引当金 = 退職給付債務 - 年金資産
= 8,000 - 2,000
= 6,000
ここで引当金の要件を思い出してください。
・将来の特定の費用又は損失
・その発生が当期以前の事象に起因する
・発生の可能性が高い
・その金額を合理的に見積ることができる
こちらの要件に当てはめてみましょう。
・将来の特定の費用又は損失
→将来、従業員等が退職した場合に支払われる
・その発生が当期以前の事象に起因する
→従業員等が提供した労働サービスに起因する
・発生の可能性が高い
→定年制度がある場合は必ず退職する
・その金額を合理的に見積もることができる
→退職金規定等のルール、過去の実績などから一定程度の精度で見積もりができる
いずれの要件も満たすので、引当金として処理するわけですね。
少し長くなりましたが、次回からはより具体的な計算についてみていきましょう!
(vol.34へ続く)