かいけいがく vol.32 - 資産除去債務 Part.3 -
(vol.31から続く)
前回は資産除去債務の割引計算について説明しました。
資産除去債務は実際に撤去等が行われるのは将来であるため、現時点での算定額はどうしても見積もりにならざるを得ません。
もしも、ある時点で見積もりの金額が変わった場合はどうしたらいいでしょうか?
今回は、資産除去債務の見積もりの変更について説明します。
資産除去債務の見積りの変更
(割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更)10. 割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合の当該見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理する。
資産除去債務が法令の改正等により新たに発生した場合も、見積りの変更と同様に取り扱う。
(割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更による調整額に適用する割引率)
11. 割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じ、当該キャッシュ・フローが増加する場合、その時点の割引率を適用する。
これに対し、当該キャッシュ・フローが減少する場合には、負債計上時の割引率を適用する。
なお、過去に割引前の将来キャッシュ・フローの見積りが増加した場合で、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは、加重平均した割引率を適用する。
将来CFが増加する場合と減少する場合で適用する割引率が異なります。
増加する場合:その時点の割引率
減少する場合:負債計上時の割引率
例)A社は生産設備を10,000で取得した。当該設備は利用後に所定の手続きにより処分する法的な義務が法令により定められている。
見積額、割引率については以下の通りとする。
(説明の簡略化のため、減価償却は考慮しない)
(仕訳)
2015/4/1
有形固定資産 11,293 / 未払金 10,000
資産除去債務 1,293 *1
*1 1,500 ÷ (1.03)^5
2016/3/31
利息費用 38 / 資産除去債務 38 *2
*2 1,293 × 3%
資産除去債務:1,293 + 38 = 1,331
2017/3/31
利息費用 39 / 資産除去債務 39 *3
*3 1,331 × 3%
有形固定資産 464 / 資産除去債務 464 *4
*4 (2,000 - 1,500) ÷ (1.025)^3
資産除去債務:1,331 + 39 + 464 = 1,834
2018/3/31
利息費用 52 / 資産除去債務 52 *5
*5 加重平均割引率を算定する。
3% × 1,500/2,000 + 2.5% × 500/2,000 = 2.875%
利息費用を計算する。
1,834 × 2.875% = 52
資産除去債務 753 / 有形固定資産 753
*6 減少した場合、新たに見積もった金額を当初の割引率(ここでは加重平均割引率)で割り戻して計算する。
1,200 ÷ (1.02875)^2 = 1,133
それまでに計上した資産除去債務の金額との差分を調整する。
(1,834 + 52) - 1,133 = 753
・・・・
このように見積もりの変更については適用する割引率が異なることに注意が必要です。
(vol.33へ続く)