かいけいがく vol.31 - 資産除去債務 Part.2 -

(vol.30から続く)

 

前回は資産除去債務がどのようなものかについてを説明しました。

今回はどのように算定されるのか?、その方法についてです。

 

企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準

 

6. 資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定する。

(1) 割引前の将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づく自己の支出見積りによる。

その見積金額は、生起する可能性の最も高い単一の金額又は生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの発生確率で加重平均した金額とする。

将来キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に係る作業のために直接要する支出のほか、処分に至るまでの支出(例えば、保管や管理のための支出)も含める。

(2) 割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率とする。  

 

事例で確認しましょう!

 

例)2019/4/1、C社は新規事業に利用するために生産設備を50,000で取得した。当該設備を撤去する際には原状回復義務を負うことが法的に定められている。

除去費用は5,000と見積もられた。

法定耐用年数は5年、割引率は2%とする。

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5年後に除去するための費用が5,000かかると見積もっています。
将来の除去費用が”現時点で”いくらなのかを割引計算により求めます。

 

(計算式)

将来CF ÷ (1+割引率)*n = 現在価値

5,000 ÷ 1.02*5 = 4,528

 

よって取得時点でこの金額を取得価額に加算します。

 

(仕訳)

機械装置 54,528 / 未払金      50,000

           資産除去債務 4,528

 

そして、期間が経過するごとに資産除去債務に加算します。

 

企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準

 

9. 時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理する。当該調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定する。

(仕訳)

2020/3/31

利息費用 90*1 / 資産除去債務 90

*1 期首時点の資産除去債務 × 割引率

  4,528 × 2% = 90

 

資産除去債務の計算は割引計算という見慣れない計算が登場しますが、これは普段、みなさんが見かける預金の金利の計算をイメージするとわかりやすいかと思います。

 

例)現在、預金口座に10,000が預けられている。金利は年利2%とする。

1年後の金額はいくらになるか?

 

この場合の計算式は以下のとおりです。

(計算式)

現在の残高 × 金利 = 1年後の残高

10,000 × 2% = 10,200

 

資産除去債務の割引計算はこの計算を逆の視点でみます。

つまり、1年後に10,000の価値があるならば、現在時点でいくらの価値になるか?

それを計算しているわけです。

 

(計算式)

現在価値 ×(1+割引率)*n =  将来CF

x × (1+0.02)*5 = 5,000

 

中学校で習う方程式を解く要領で、わからないものを未知数xとすると、

x = 5,000 ÷ 1.02*5

x =  4,528

 

となります。

慣れるまで、なかなか分かりづらいかと思いますが、金利の計算を思い出して頂ければイメージが湧くかと思います。

 

(vol.32へ続く)