かいけいがく vol.35 - 退職給付 Part.3 -

(vol.34から続く)

 

前回、数値計算上の差異と過去勤務費用についての説明を省略したので、今回はそちらについて説明します。

 

企業会計基準 第26号「退職給付に関する会計基準

 

11. 「数理計算上の差異」とは、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。

なお、このうち当期純利益を構成する項目として費用処理(費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理を含む。以下同じ。)されていないものを「未認識数理計算上の差異」という(第 24 項参照)。


12. 「過去勤務費用」とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。なお、このうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないものを「未認識過去勤務費用」という(第 25 項参照)。  

 

数理計算上の差異

退職給付債務、年金資産の計算は将来に起こる取引を見込んで計算するため、見積もり計算となるため、実際の数値と乖離する場合があります。

そのような場合の差異のことを数理計算上の差異といいます。

 

過去勤務費用

退職給付の水準が改訂された場合に改訂前と改訂後の退職給付債務の金額に差異がある場合、その金額を過去勤務費用といいます。

 

例)数理計算の結果、退職給付債務は5,000、年金資産は2,000と計算された。

当期末時点でそれぞれ5,000、1,800が計上されている。

 

(計算式)

2,000 - 1,800 = 200

 

将来で起こる取引を取り扱う以上、現時点での算定額はおのずと見積もりにならざるを得ません。

帳簿上、計上している金額が毎期、妥当であることを反映させた場合に生じる差異が数値計算上の差異、過去勤務費用です。

 

企業会計基準 第26号「退職給付に関する会計基準

 

24. 数理計算上の差異は、原則として各期の発生額について、予想される退職時から現在までの平均的な期間(以下「平均残存勤務期間」という。)以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する(注7)(注8)。・・・

 

(注7)数理計算上の差異については、未認識数理計算上の差異の残高の一定割合を費用処理する方法によることができる。

この場合の一定割合は、数理計算上の差異の発生額が平均残存勤務期間以内に概ね費用処理される割合としなければならない。
数理計算上の差異については、当期の発生額を翌期から費用処理する方法を用いることができる。


(注8)割引率等の計算基礎に重要な変動が生じていない場合には、これを見直さないことができる。

 

25. 過去勤務費用は、原則として各期の発生額について、平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する(注9)(注10)。・・・

(注9)過去勤務費用については、未認識過去勤務費用の残高の一定割合を費用処理する方法によることができる。

この場合の一定割合は、過去勤務費用の発生額が平均残存勤務期間以内に概ね費用処理される割合としなければならない。


(注10)退職従業員に係る過去勤務費用は、他の過去勤務費用と区分して発生時に全額を費用処理することができる。

 

計算された差異については、現時点から退職までの予想される平均的な期間(平均残存勤務期間)で費用処理されることになります。

 

例)数理計算上の差異が以下のように発生している。

数理計算上の差異:200(貸方差異)

平均残存勤務期間:10年

費用処理:毎期均等に償却する

 

(計算式)

毎期の費用処理する金額:200 ÷ 10 = 20

 

(仕訳)

退職給付引当金 20 / 退職給付費用 20

 

(vol.36へ続く)