かいけいがく vol.25 - 無形固定資産 Part.2 -
(vol.24から続く)
・受注制作ソフトウェア
四 研究開発費に該当しないソフトウェア制作費に係る会計処理
1 受注制作のソフトウェアに係る会計処理
受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理する。
受注制作ソフトウェアの会計処理については、「工事契約に関する会計基準」等が適用されておりましたが、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が新たに制定されたことにより、こちらが適用されます。
81. 2020 年に改正した本会計基準(以下「2020 年改正会計基準」という。)は、2021 年 4月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
90. 第 81 項の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は廃止する。
(1) 企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」という。)
(2) 企業会計基準適用指針第 18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「工事契約適用指針」という。)
(3) 実務対応報告第 17 号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「ソフトウェア取引実務対応報告」という。)
・市場販売目的ソフトウェア
四 研究開発費に該当しないソフトウェア制作費に係る会計処理
2 市場販売目的のソフトウェアに係る会計処理
市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければならない。ただし、製品マスターの機能維持に要した費用は、資産として計上してはならない。
日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」
市場販売目的のソフトウェアの取扱い
(研究開発の終了時点)
8.市場販売目的のソフトウェアの制作に係る研究開発の終了時点は、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」の完成時点である。この時点までの制作活動は研究開発と考えられるため、ここまでに発生した費用は研究開発費として処理する。
「最初に製品化された製品マスター」の完成時点は、具体的には次の2点によって判断する。
① 製品性を判断できる程度のプロトタイプが完成していること② プロトタイプを制作しない場合は、製品として販売するための重要な機能が完成しており、かつ重要な不具合を解消していること
(製品マスター完成後の制作費に係る処理)
9.製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は、原則として資産に計上する。ただし、著しい改良と認められる場合は、著しい改良が終了するまでは第8項の研究開発の終了時点に達していないこととなるため、研究開発費として処理する。
(製品マスターの制作原価)
10.製品マスターについては、適正な原価計算によってその取得原価を算定する。製品マスターの制作原価は、制作仕掛品についてはソフトウェア仮勘定などの勘定科目により、また、完成品についてはソフトウェアなどの勘定科目によって、いずれも無形固定資産として計上する。
なお、無形固定資産としての表示に当たっては製品マスターの制作仕掛品と完成品を区分することなく一括してソフトウェアその他当該資産を示す名称を付した科目で掲げることとするが、制作仕掛品に重要性がある場合にはこれを区分して表示することが望ましい。
以上をまとめると、市場販売目的ソフトウェアの処理は次のとおりです。
例)会計ソフトの販売のためにシステム構築等の名目で20,000を支払った。
その後、製品マスターが完成してたが、完成後も細かいメンテナンスのために5,000を支払った。また、大幅な機能追加のために30,000を支払っている。
(仕訳)
研究開発費 20,000 / 未払金 20,000
ソフトウェア 5,000 / 現金 5,000
研究開発費 30,000 / 未払金 30,000
このように市場販売目的ソフトウェアは資産計上する場合と、費用処理する場合に分かれるので、注意が必要です。
(vol.26へ続く)