かいけいがく vol.57 - 税効果 Part.2 -

(vol.56から続く)

 

税効果会計の概要について説明したところで、具体的な会計処理についてひとつずつ、みていきましょう。

 

まずは、一時差異についてです。

 

企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

 

(3) 「一時差異」とは、連結貸借対照表及び個別貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいう。
なお、一時差異及び税務上の繰越欠損金等を総称して「一時差異等」という。税務上の繰越欠損金等には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法(昭和 32年法律第 26 号)上の法人税額の特別控除等が含まれる。

 

ここでは、個別財務諸表に限定して話を進めます。

 

一時差異は将来の税金減額効果を持つ「将来減算一時差異」と将来の税金支払を増額する効果がある「将来加算一時差異」の2つがあります。

 

企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

 

(4) 「財務諸表上の一時差異」とは、個別財務諸表において生じる一時差異のことをいい、将来減算一時差異又は将来加算一時差異に分類される。

① 「将来減算一時差異」とは、財務諸表上の一時差異のうち、当該一時差異が解消する時にその期の課税所得を減額する効果を持つものをいう。

② 「将来加算一時差異」とは、財務諸表上の一時差異のうち、当該一時差異が解消する時にその期の課税所得を増額する効果を持つものをいう。

 

また、ここでいう欠損金とは以下のように定義されます。

 

企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

 

(7) 「税務上の欠損金」とは、法人税等に係る法令の規定に基づき算定した各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額が益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。 

 

益金 - 損金 = 所得 < 0 の場合が欠損金が生じている状態です。

 

青色申告書を提出する法人の場合、翌期以降への繰越が認められます。

www.nta.go.jp

 

 

まとめると以下のとおりです。

 

一時差異等 = 一時差異        +    繰越欠損金等     

       (将来加算・減算一時差異)

 

一時差異等に係る税金額は、将来的に一時差異が解消されるときに課税所得を減額又は増額するものに限り、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上します。

 

企業会計審議会「税効果会計に係る会計基準

 

二 繰延税金資産及び繰延税金負債等の計上方法

一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を除き、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければならない。繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない。(注4)(注5)

 

(注4)繰延税金資産及び繰延税金負債の計上に係る重要性の原則の適用について
 重要性が乏しい一時差異等については、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しないことができる。

 

(注5)繰延税金資産の計上について
 繰延税金資産は、将来減算一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。 

 

簡単に説明すると、以下のとおりです。

 

繰延税金資産 = 税金の前払い相当分

繰延税金負債 = 税金の未払い相当分

 

繰延税金資産は将来的に税金の減額効果がある、税金の前払い相当にあたるので資産に計上、繰延税金負債は将来的に税金の増額効果がある、税金の未払い相当にあたるので負債計上するというわけです。

 

なお、英語で繰延税金資産はDeferred Tax Asset、繰延税金負債はDeferred Tax Liabilityと呼ばれるので、それぞれDTA、DTLと略して表記したりします。

 

(vol.58へ続く)