財務分析のきほん vol.1
財務諸表の基本について押さえたところで、次に財務分析についてみてみましょう。財務分析は、財務諸表の数値を使って会社を分析することです。着目すべきところとしては、生産性や安全性などがあります。また、それぞれに參考とすべき指標がいくつかあります。
ここでは代表的なところを取り上げます。
1.ROA(Return On Assets:総資産利益率)
ROAは投下したすべての資産からどれだけの利益を得ることが出来たのかを測る指標です。
(計算式)
ROA = 利益 ÷ 総資産
上記の式の分子の利益はどの利益を利用するべきでしょうか?
純利益や経常利益だと、メインとなる事業以外の影響(臨時的な損益や利息などの影響)が考慮されてしまいます。そこで、ここでは営業利益を採用することにします。
また、上記の式は以下のように分解することが出来ます。
ROA = 営業利益 ÷ 総資産
= (営業利益 ÷ 売上高) × (売上高 ÷ 総資産)
(営業利益 ÷ 売上高)は売上高利益率、つまり収益性を表す指標です。また、(売上高 ÷ 総資産)は総資産回転率、投下した資産でどれだけの成果を挙げたかを表す生産性の指標です。
このようにROAは収益性を表す指標と生産性を表す指標に分解することが出来ます。
2.ROE(Return On Equity:自己資本利益率)
ROEは自己資本、つまり株主から出資されたお金でどれだけの成果を表す指標です。
(計算式)
ROAはすべての資産からのリターンを測るのに対して、ROEは自己資本からのリターンを図ります。
(ROAの対象とする範囲)
(ROEの対象とする範囲)
ROEは次のように分解できます。
= (利益 ÷ 売上高) × (売上高 ÷ 総資産) × (総資産 ÷ 自己資本)
(利益 ÷ 売上高)は収益性を表す指標、(売上高 ÷ 総資産)は生産性を表す指標であることはROAと同様ですが、ROEは(総資産 ÷ 自己資本)も考慮されます。
(総資産 ÷ 自己資本)は財務レバレッジと呼びます。計算式が表すように、自己資本に対する総資産の割合です。ここで注意が必要なのは、ROEは財務レバレッジを改善すれば高めることが出来てしまうことです。
例えば、銀行などから借り入れをして、そのお金で配当や自己株式を買ってもROEは改善されてしまいます。このように、本来のビジネスで稼ぐこととは別の財務上の手続きで指標が改善されてしまいます。
会社の目的は将来に稼ぐお金、キャッシュ・フローを最大化することですから、上記のようなことをしても、本質的な事業の価値が高まるわけではありません。
(vol.2へ続く)