Stand Alone Complex的な社会の移り変わりについて

アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では、示し合わせたわけではないのに、独立した人々がある思想を媒介として似たような言動を示すことを称して、Stand Alone Complexと呼んでいます。作中では、”笑い男”なる人物の挙動を模倣する追従者たちが現れます。それら、個々人は互いに関係性が無いにも関わらず、類似する行動、”笑い男”の事件に影響されて、似たような行動を取ります。模倣犯なのでしょうが、不特定多数の人間が意図したわけではないのに、同じような思想を持ち、同じような行動に至るところは現実の社会でも観察される現象です。

 

流行と呼ばれるものも同じことかと思います。きっかけは雑誌で有名なモデルが着用していたとか、人気のロックバンドが使用していたといったことでしょう。それに影響された人々が意図せずに同じような挙動を示す。再現性のある法則です。

 

例えば、最近の若者はお金を使わないと言われます。車を買わず、結婚せず、ネットがあるので、NetflixYouTubeを楽しみ、買い物はAmazonやメルカリで・・・といったように出来るだけ消費に走らないように生活しています。それを称して嫌消費などと言われます(私は出来る限りお金を使わずに、人生を楽しめれば、絶対にそっちのほうが良いと思いますが、、、)。

 

その他にも、働き方の変化も一つの事例です。今までずっと同じ会社に帰属して働くことが当たり前になってきましたが、昨今はフリーランス的な働き方を選ぶ人たちも増えています。この現象もみんなで話し合ってそうしようとしたわけではなく、(何をきっかけにそうなったかはわかりませんが)個々人が主体的に判断してそのような生き方を選択するに至っています(何故、そのような変化が起こったのか、考えてみるのは面白いかもしれませんね)。

 

ちなみに、個人的に上記の要因を分析すると、「若者がお金を使わない」ことは、前世代の大量生産・大量消費的な無駄遣いとも見える、”記号的消費”とも称される消費行動の反動として、質素倹約とは言わないまでも、「それいらなくね?」といった当たり前の感想を実生活で展開しているとも取れます。経済成長が鈍化したから先行きの見通しの悪さから消費しないとか、資源を大切にする生活を心がけているといった説明も可能でしょうが、私はおそらくは「必要のないことはしない」といった当たり前のことを当たり前に行っているのが、今の若い世代の消費行動の説明としてはシックリきます。

 

フリーランス的な働き方が増えている」については、社会が成熟した、つまり、経済的に豊かになってきたことに伴い、生きていく上で必要なものは安価に得ることが出来るようになりました。その中で、必要以上に自分の気持ちを犠牲にして、他人が決めたやりたくないことに従属することを拒否しやすくなった。生活に必要なコストを回収するのに、それほどの対価を払わなくても良いように一見して、社会が形成されていることが大きな要因かと思います。

 

話が脱線しましたが、社会の変化は(特定は出来ないのでしょうが・・・)何かの複合的な要因により、意図せざる内に大多数の人をある一定の方向に進ませようとする大きなうねりのようなものである、ということです。それにロマンを感じますし、諸行無常な感じを抱くということです。

 

保守的になろうとしても、何かの習慣を温存しようとしても、それを許さないのが歴史が示すひとつの法則です。ずっと続いてきた社会の仕組みはないですし、時代ごとに適切な方法は変わっていくのが自然な流れのようです。