かいけいがく vol.47 - ストック・オプション Part.4 -
(vol.46から続く)
未公開企業における取扱い
企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」
13. 未公開企業については、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことができる。
この場合、本会計基準の他の項で「公正な評価単価」を、「単位当たりの本源的価値」と読み替えてこれを適用する。この結果、特に第 6 項(1)の適用に関しては、付与日現在でストック・オプションの単位当たりの本源的価値を見積り、その後は見直さないこととなる。
ここで、「単位当たりの本源的価値」とは、算定時点においてストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値であり、当該時点におけるストック・オプションの原資産である自社の株式の評価額と行使価格との差額をいう。
こちらを事例で確認しましょう!
適用指針の事例がわかりやすいので、こちらをみてみましょう。
(注記情報については検討しないことにします。)
企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」
[設例 4] 未公開企業における取扱い(会計基準第 13 項及び第 16 項(5))
M 社は、X3 年 6 月の株主総会において、従業員のうちマネージャー以上の者 15 名に対して以下の条件のストック・オプション(新株予約権)を付与することを決議し、同年 7 月 1日に付与した。① ストック・オプションの数:従業員 1 名当たり 160 個(合計 2,400 個)であり、ストック・オプションの一部行使はできないものとする。
② ストック・オプションの行使により与えられる株式の数:合計 2,400 株
③ ストック・オプションの行使時の払込金額: 1 株当たり 75,000 円
④ ストック・オプションの行使期間:X5 年 7 月 1 日から X7 年 3 月末日
⑤ 実際に株式が公開されたのは、予定どおり X5 年 7 月であった。
⑥ 付与されたストック・オプションは、他者に譲渡できない。
⑦ 付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価を合理的に見積ることができないことから、単位当たりの本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行う。
⑧ 割引キャッシュ・フロー法により算定された M 社株式の評価額は、付与時において50,000 円/株、X4 年 3 月期で 70,000 円/株、X5 年 3 月期で 120,000 円/株である。
⑨ 株式公開後の株価は、以下のとおりである。
・ X6/3 期:行使時 135,000 円/株、期末 130,000 円/株
・ X7/3 期:行使時 140,000 円/株、期末 150,000 円/株
⑩ X3年 7月のストック・オプション付与時点における権利不確定による失効見込みは、ゼロであり、実際に X5 年 6 月末までに権利不確定により失効したのは、1 名であった。
⑪ 年度ごとのストック・オプション数の実績は以下のとおりである。
⑫ 新株予約権が行使された際、新株を発行する場合には、権利行使に伴う払込金額及び行使された新株予約権の金額の合計額を資本金に計上する。
(仕訳)
x4年3月期〜x6年3月期
仕訳なし*1
*1 行使価格75,000円 > 株式の評価額50,000円となっているので、
付与時の単位あたり本源的価値はゼロとなる。
x6年3月期 10名の権利行使
現預金 120,000,000*2 / 資本金 120,000,000
*2 75,000 円/株×160 株/名×10 名=120,000,000 円
x7年3月期 3名の権利行使
現預金 36,000,000*3 / 資本金 36,000,000
*3 75,000 円/株×160 株/名×3 名=36,000,000 円
権利不行使による失効
仕訳なし*4
*4 付与時における単位あたり本源的価値がゼロのため。
未公開企業ではストック・オプションの公正な評価額について信頼性ある見積もりが困難であることが多いです。そこで、一般投資家が存在しないことを考慮して、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、その単位当たりの本源的価値の見積りによることが認められています。
(vol.48へ続く)