日本版ESOPに関する会計処理 - vol.2 -
(vol.1から続く)
②株式給付型
従業員持株会型と同様の要件を満たす場合、会社は期末において総額法を適用します。
会社は従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社株式を取得した
時の株価を乗じた金額を基礎として費用および引当金を計上します。
また、信託から従業員に株式が交付された場合、当該引当金を取り崩します。
取崩額は信託が自社株式を取得したときの株価に、交付した株式数を乗じた計算します。
こちらも設例で確認しましょう!
例)前提条件は次のとおりとする。
・A社:委託者、要件を充足する従業員:受益者、信託銀行:受託者
・金銭信託の設定:300
・受給権が確定した際に、1ポイント=1株として従業員は株式を受け取る。
・信託への自己株式処分:150株 / 帳簿価額150、処分価額180
・従業員へのポイントの付与:50ポイント
・信託から従業員持株会への株式の譲渡:50株 / 処分価額100
・諸費用の金額:5
■金銭信託の設定
(仕訳)
信託口 300 / 現預金 300
■信託への自己株式の処分
(仕訳)
現預金 180 / 自己株式 150
その他資本剰余金 30
■従業員へのポイント割当
(仕訳)
福利厚生費 60 / 引当金 60*1
*1 180 ÷ 150 × 50 = 60
■信託から従業員持株会への株式の譲渡
(仕訳)
なし
■決算時処理
信託の財産をA社の個別財務諸表に計上する。
(仕訳)
現預金 75 / 信託元本 300
A社株式 120
A社株式交付費用 100
諸費用 5
信託の損益は従業員に帰属するため、諸費用を資産(ここでは信託口)に振り替える。
(仕訳)
信託口 5 / 諸費用 5
株式交付費用を取り消して、A社株式に振り戻す。
(仕訳)
A社株式 100 / A社株式交付費用 100
引当金のうち、従業員へ株式の交付が行われた部分を取り崩す。
(仕訳)
引当金 60 / A社株式 60
信託におけるA社株式は自己株式に振り替える。
(仕訳)
自己株式 120 / A社株式 120
以上となります。
連結上は、従業員持株会型、株式給付型のいずれの場合も、信託については子会社または関連会社に該当するか否かの判定を必要としません。
また、個別上の総額法の処理は連結上もそのまま引き継ぐものとします。