かいけいがく vol.132 - 収益認識 Part.2 -

(1) 顧客との契約を識別する

 

まずは、収益認識に関する5つのステップのひとつめである契約の識別についてです。

 

まずは本会計基準上での契約の定義について確認しましょう。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」 第5項

5. 「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいう。 

 

会計基準では以下の5つの要件をすべて満たす顧客との契約を識別するとしています。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」 第19項

(1) 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること

(2) 移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること

(3) 移転される財又はサービスの支払条件を識別できること

(4) 契約に経済的実質があること(すなわち、契約の結果として、企業の将来キャッシュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること)

(5) 顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと当該対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧客が支払う意思と能力を考慮する。 

 

当該要件を満たさない顧客との契約については、事後的に要件を満たすのか評価して、要件に該当する場合に収益認識に関する会計基準等を適用することになります。

 

また、顧客との契約が上記の要件を満たさない場合に受け取った対価については、以下のいずれかに該当する場合に、収益として認識します。そうでない場合、いずれかの要件に該当するまで、受け取った対価は将来における財又はサービスを移転する義務又は対価を返金する義務として負債として認識します。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」 第25項

(1) 財又はサービスを顧客に移転する残りの義務がなく、約束した対価のほとんどすべてを受け取っており、顧客への返金は不要であること

(2) 契約が解約されており、顧客から受け取った対価の返金は不要であること 

 

同一の顧客と、同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、以下のいずれかの要件に該当する場合、複数の契約を同一の契約とみなして扱います。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」 第27項

(1) 当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと

(2) 1 つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を受けること

(3) 当該複数の契約において約束した財又はサービスが、第 32 項から第 34 項に従うと単一の履行義務となること 

 

契約について変更が生じた場合、以下の要件を満たす場合は契約変更を独立した契約として処理します。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」 第30項

(1) 別個の財又はサービス(第 34 項参照)の追加により、契約の範囲が拡大されること

(2) 変更される契約の価格が、追加的に約束した財又はサービスに対する独立販売価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること 

 

契約変更が上記要件を満たさずに、独立した契約として処理されない場合、契約変更日に未だ移転していない財またはサービスは以下のいずれかの方法により処理します。

 

企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」 第31項

(1) 未だ移転していない財又はサービスが契約変更日以前に移転した財又はサービスと別個のものである場合には、契約変更を既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理する。残存履行義務に配分すべき対価の額は、次の①及び②の合計額とする。

① 顧客が約束した対価(顧客から既に受け取った額を含む。)のうち、取引価格の見積りに含まれているが収益として認識されていない額

② 契約変更の一部として約束された対価

(2) 未だ移転していない財又はサービスが契約変更日以前に移転した財又はサービスと別個のものではなく、契約変更日において部分的に充足されている単一の履行義務の一部を構成する場合には、契約変更を既存の契約の一部であると仮定して処理する。

これにより、完全な履行義務の充足に向けて財又はサービスに対する支配を顧客に移転する際の企業の履行を描写する進捗度(以下「履行義務の充足に係る進捗度」という。)及び取引価格が変更される場合は、契約変更日において収益の額を累積的な影響に基づき修正する。

(3) 未だ移転していない財又はサービスが(1)と(2)の両方を含む場合には、契約変更が変更後の契約における未充足の履行義務に与える影響を、それぞれ(1)又は(2)の方法に基づき処理する。 

 

(vol.133へ続く)