条件付取得対価の会計処理 - vol.1 -

企業結合に関しては以前に説明しました。

 

かいけいがく vol.78 - 企業結合 Part.1 - - かいけい日記

かいけいがく vol.79 - 企業結合 Part.2 - - かいけい日記

かいけいがく vol.80 - 企業結合 Part.3 - - かいけい日記

 

今回は、条件付取得対価に関する会計処理についてです。

 

まずは定義を確認しましょう。

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」注2

条件付取得対価とは、企業結合契約において定められるものであって、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、企業結合日後に追加的に交付される若しくは引き渡される又は返還される取得対価をいう。 

 

条件付取得対価については、会計基準等で次のパターンが示されています。

 

①.将来の業績に依存する条件付取得対価

②.特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価

 

ひとつずつ解説します。

 

①.将来の業績に依存する条件付取得対価

まず、将来の業績に依存する場合とは、どのような場合を指すのでしょうか?

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」注3

条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合とは、被取得企業又は取得した事業の企業結合契約締結後の特定事業年度における業績の水準に応じて、取得企業が対価を追加で交付する若しくは引き渡す又は対価の一部の返還を受ける条項がある場合等をいう。 

 

上記に該当する場合、次のように会計処理します。

 

(要件)

・条件付取得対価の交付又は引き渡しが確実であること

・その時価が合理的に決定可能となった時

 

(会計処理)

・支払対価を取得原価として追加で認識する。

・のれんを追加で認識又は、負ののれんを減額する。

 

また、対価の一部の返還を受ける条項がある場合、次のように会計処理します。

 

(要件)

・条件付取得対価の返還が確実であること

・その時価が合理的に決定可能となった時

 

(会計処理)

・返還される対価の金額を取得原価から減額する。

・のれんを減額する又は負ののれんを追加的に認識する。

 

この際、留意事項があります。

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」注4

追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは、企業結合日時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理する。

 

こちら、設例で確認しましょう。

例)

(前提条件)

・企業結合日:2022年4月末

・取得企業:X社(決算期:3月)

・被取得企業Y社(決算期:9月)

・取得方法:株式交換

・企業結合日における、のれんの金額:100

・のれんの償却期間:10年間

・条件付取得対価に関する情報:Y社の2022年9月期の営業利益が1,000を上回った場合、X社はY社株主に対して、X社株式を追加で200(交付時価相当)を交付する条項が企業結合契約に含まれている。

 

(会計処理)

2023年3月末、Y社の2022年9月期の営業利益が1,000を上回ることが確実となった。X社は旧Y社株主に追加でX社株式200を交付した。

 

・X社の連結上の処理

(仕訳)

2023年3月末

のれん    180 / 未払金 200

のれん償却費   20

 

株式発行時

未払金 200 / 資本金 200

 

(vol.2へ続く)

 

(参考)

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準

企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」