取得 - 吸収合併 - vol.1
企業結合に関する会計処理については、以前に書いたとおりです。
ここでは、各々の組織再編の形式に分けて、それぞれの場合でどのように会計処理が異なるのかについて考察してみましょう。
ケース1.吸収合併
取得とされた吸収合併の処理についてです。まず、取得の手順について復習しましょう。
(取得の手順)
1.取得企業の決定
↓
2.取得原価の算定
↓
3.取得原価の配分
↓
4.のれんの処理
↓
5.増加資本の処理
上記の各段階に分けてみていきます。
1.取得企業の決定
ここでは以下の通りとします。
取得企業:吸収合併存続企業、被取得企業:吸収合併消滅企業
2.取得原価の算定
・・・取得原価は、原則として、取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価で算定する。・・・
対価を現金とそれ以外に分けて考えます。
2−1.現金
対価が現金の場合、取得対価は現金の支出額となります。
・・・支払対価が現金の場合には現金支出額で測定されるが、・・・
2−2.それ以外
・・・支払対価が現金以外の資産の引渡し、負債の引受け又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の時価と被取得企業又は取得した事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。
ここでは、対価が取得企業の株式である場合を考えます。
企業会計基準適用指針第 10 号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第38項
支払対価として取得企業の株式が交付された場合の取得の対価は、原則として、当該株式の企業結合日における時価により算定する。・・・
3.取得原価の配分
4.のれんの処理
取得原価は識別可能資産・負債に対して、企業結合日の時価を基礎として配分することにになります。取得原価が受け入れた資産・負債の配分額を上回る場合、その金額はのれんとして処理します。逆に、取得原価が配分額を下回る場合、負ののれんとして処理します。
取得原価 > 配分額 → のれん
取得原価 < 配分額 → 負ののれん
5.増加資本の処理
企業会計基準適用指針第 10 号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第79項
79. 企業結合の対価として、取得企業が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理する・・・
以上となります。
ちなみに、吸収合併消滅企業の最終事業年度の処理についても定めがあります。
企業会計基準適用指針第 10 号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第83項
83. 吸収合併が取得とされた場合の吸収合併消滅会社の最終事業年度の財務諸表は、吸収合併消滅会社が継続すると仮定した場合の適正な帳簿価額による。
ルールの確認は以上となります。ですが、これだけだとイメージが湧かないかと思います。数値を使って事例を確認すると、理解がはかどると思いますので、次回は数値例で確認しましょう。
(参考)