かいけいがく vol.11 - 貸倒引当金 Part.1 -
(vol.10から続く)
売上債権(以下、債権と呼びます)の回収の見込みがないことを決算書上では、引当金の計上をもって表します。
将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。
発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。
引用元:企業会計原則 注解18
引当金の要件をまとめると、以下のようになります。
当該要件を満たした場合に引当金が計上されます。
・将来の特定の費用又は損失
・その発生が当期以前の事象に起因して発生
・発生の可能性が高いこと
・金額を合理的に見積ることができる
引当金の計上について別の観点から考察してみましょう。
キーワードは以前に説明した”継続企業の前提”と”発生主義”です。
例)2019/12/20に得意先Eに対して商品Fを掛取引で10,000で売り上げた。過去の実績等から当該得意先の回収代金の内、200が回収の見込みがないと試算された。
なお、販売代金の回収は翌期の2020/1/31であるとする。
翌期になって回収期日がきたが、そのうち200が回収ができなかったとする。
まずは仕訳から考えてみましょう!
引当金を計上しない場合を考えてみます。
(仕訳)
2019/12/20
売掛金 10,000 / 売上 10,000
2020/1/31
貸倒損失 200
この場合の各期のP/Lを考えてみましょう。
(説明の都合上、その他に取引はないものと仮定します)
売上金額のうち貸倒れた200が2020年12月期のP/Lに計上されています。
上記の表現はおかしいですね。どこがおかしいかわかりますか?
そうです。
貸倒れた200ですが、本来は売り上げた10,000の取引によって生じた事実ですから、この200の貸倒れは2019年12月期に計上してこそ、適切な損益が計算されるはずです。
では、どのようにしたら、適切な会計処理となるでしょうか?
(vol.12へ続く)