経過勘定について

会計の考え方に馴染みがない方にとって、経過勘定前払費用、前受収益、未払費用、未収収益)の処理はあまりピンとこないところかもしれません。そこで、簡単にまとめておきたいと思います。

 

その前に、発生主義の考え方を紹介しておきます。経過勘定の処理も発生主義を前提としているからです。

 

企業会計原則 第二 損益計算書原則 一 A

すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。 前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。

 

こちらを仕訳を使って考えてみましょう。

発生主義は現金主義と対比するとわかりやすいです。現金主義では、現金の収支、つまり、現金が入ってきた時点、支出した時点で処理します。

 

例)1/20:商品を掛け売上1,000、2/20:1/20の売掛金1,000の入金

 

(仕訳)

1/20時点

仕訳なし

 

2/20時点

現金 1,000 / 売上 1,000

 

このように、現金主義では現金の出入りを捉えて会計処理を行います。

一方、発生主義はいつの時点で取引が発生したのか?、という視点で処理します。

 

(仕訳)

1/20時点

売掛金 1,000 / 売上 1,000

 

2/20時点

現金 1,000 / 売掛金 1,000

 

このように発生した時点で損益を認識することになります。発生主義に基づくと、当期の現金の収支に関わらず、取引の発生時点で取引を記録します。

 

以上の前提を基にして、経過勘定について説明します。まずは定義を確認しましょう。

 

企業会計原則 第二 損益計算書原則 一 A 注5

(1) 前払費用

 前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。

 

(2) 前受収益

 前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。

 

(3) 未払費用 

 未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対して、いまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。

 

(4) 未収収益

 未収収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、すでに提供した役務に対して、いまだ、その対価の支払を受けていないものをいう。従って、このような役務に対する対価は時間の経過に伴いすでに当期の収益として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、未収収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による未収金とは区別しなければならない。

 

こちらも設例で確認しましょう。

 

例)A社(3月決算)は、会計ソフトの利用料1年分600,000(対象期間:1/1〜12/31)を1/1に支払ったとする。

 

(仕訳)

1/1時点

支払手数料 600,000 / 現金 600,000

 

期末時点

前払費用 450,000 / 支払手数料 450,000*1

*1 600,000 × 9/12 = 450,000

 

翌期分の利用料(4/1〜12/31)は翌期の費用とするため、前払費用に計上します。

 

例)B社(3月決算)は、賃貸用に貸しているビルの賃料1年分1,200,000(対象期間:1/1〜12/31)を1/1に受け取ったとする。

 

(仕訳)

1/1時点

現金 1,200,000 / 売上 1,200,000

 

期末時点

売上 900,000 / 前受収益 900,000*2

*2 1,200,000 × 9/12 = 900,000

(翌期分(4/1〜12/31)の賃料分は翌期の収益とする。)

 

例)C社(3月決算)は、3月末時点で3月の電気代200,000(翌4月末支払)が未払いである。

 

(仕訳)

水道光熱費 200,000 / 未払費用 200,000

 

例)D社(3月決算)は、貸付金1,000,000(年利2%)で1/1に貸し付けた。利息は半期ごとに受け取れるものとする。

 

(仕訳)

1/1時点

貸付金 1,000,000 / 現金 1,000,000

 

期末時点

未収収益 5,000 / 受取利息 5,000*3

*3 1,000,000 × 2% × 3/12 = 5,000

(期末時点で発生している利息分は1/1〜3/31までの3ヶ月分)

 

以上となります。

 

上記の例からもわかる通り、経過勘定は発生主義に基づいて行う、会計上の記述方法です。発生主義は最初はわかりにくいかもしれませんが、慣れてくれば迷うことも少ないかと思います。