かいけいがく vol.12 - 貸倒引当金 Part.2 -

(vol.11から続く)

 

適正な損益の計算を行うために、以下のような仕訳を考えてみましょう。

 

2019/12/20

売掛金 10,000 / 売上 10,000

 

2019/12/31

貸倒引当金繰入 200 / 貸倒引当金

 

2020/1/31

普通預金  9,800 / 売掛金 10,000

貸倒引当金    200

 

この場合の各期のP/Lを考えてみましょう!

(ここでも他に取引はないものと仮定します)

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売上10,000とそれに関連して発生するであろうと見込まれた貸倒れ見積額200が対応して、各期の損益が適正に計算されていることがわかります。

 

結局のところ、引当金というものは継続企業の前提、つまりずっと事業活動を行うという前提のもとに、人為的に期間を区切って会計報告を行うこと、そして、発生主義に基づいて損益計算を行うという決まりがある故に実施される会計の1つの技法です。

 

さて、上記の例では貸倒れの見積もりが200であると仮定しましたが、実際にはどのように行うのでしょうか?

 

会計基準をのぞいてみましょう。

 

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第27項

27. 貸倒見積高の算定にあたっては、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分する。
(1) 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(以下「一般債権」という。)


(2) 経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(以下「貸倒懸念債権」という。)


(3) 経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(以下「破産更生債権等」という。)

 

ルール上は、まず債権を以下のように分類します。

 

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その上で、それぞれの債権区分に応じて貸倒れ高を見積もります。

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第28項

28. 債権の貸倒見積高は、その区分に応じてそれぞれ次の方法により算定する(注9)

(1) 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。

(2) 貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定する。

ただし、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。


① 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額につ
いて債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法

② 債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積る
ことができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受
取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引い
た金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法


(3) 破産更生債権等については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする(注10)。 

 

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このように、取引先の信用状況に財政状態や経営成績の状況によって、債権を区分してそれぞれに適した方法で貸倒れ見積高を算定することになります。

 

(vol.13へ続く)