かいけいがく vol.59 - 税効果 Part.4 -

(vol.58から続く)

 

さて、前回は簡単な設例を用いて実際の税効果会計の処理を確認しました。

設例では繰延税金資産の回収可能性は考慮しませんでしたが、実際は一時差異等の内、回収が見込まれないものについては、繰延税金資産を計上しません。

 

企業会計審議会「税効果会計に係る会計基準

 

二 繰延税金資産及び繰延税金負債等の計上方法

一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を除き、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければならない。

繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない。 

 

繰延税金資産は将来の税金の支払いを減額する効果を有するものです。

ですので、税金の負担を減少させる効果がない金額は、回収の見込みがないということで、繰延税金資産に計上しません。

その見直しは毎期行う必要があります。

 

では、どのような場合に回収の可能性があると認められるのでしょうか?

 

企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」

 

6. 将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性は、次の(1)から(3)に基づいて、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを判断する。

(1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得

・・・

(2) タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得

・・・

(3) 将来加算一時差異

・・・ 

 

回収可能性の判断にあたっては3つの判断基準が示されています。

ひとつずつみていきましょう。

 

企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」

 

(1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得

① 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性
将来減算一時差異の解消見込年度及びその解消見込年度を基準として税務上の欠損金の繰戻し及び繰越しが認められる期間(以下「繰戻・繰越期間」という。)に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性
税務上の繰越欠損金が生じた事業年度の翌期から繰越期限切れとなるまでの期間(以下「繰越期間」という。)に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

上記①の解消見込年度及び繰戻・繰越期間に、又は上記②の繰越期間に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうかを判断するためには、過去の業績や納税状況、将来の業績予測等を総合的に勘案し、将来の一時差異等加減算前課税所得を合理的に見積る必要がある。  

 

将来的に収益を計上し、課税所得が見込めるかどうかが問題です。

将来減算一時差異の解消見込の年度、欠損金の繰越期間に税金の支払いの必要がある

課税所得がそもそも発生するかどうかが、「収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得」です。

 

企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」

 

(2) タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得

将来減算一時差異の解消見込年度及び繰戻・繰越期間又は繰越期間に、含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等のタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

 

将来減算一時差異の解消見込年度、欠損金の繰越期間に、課税所得を発生させるような取引を予定しているかどうかが、「タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得」です。

 

企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」

 

(3) 将来加算一時差異

① 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性
将来減算一時差異の解消見込年度及び繰戻・繰越期間に、将来加算一時差異が解消されると見込まれるかどうか。

② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性
繰越期間に税務上の繰越欠損金と相殺される将来加算一時差異が解消されると見込まれるかどうか。

 

将来減算一時差異の解消見込年度、欠損金の繰越期間に、それらと相殺できる将来加算一時差異が生じる見込みがあるかどうか、最後の項目の「将来加算一時差異」です。

 

企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」

 

7. 将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産は、第 6 項に従って回収可能性を判断した結果、当該将来減算一時差異(複数の将来減算一時差異が存在する場合は、それらを合計する。)及び税務上の繰越欠損金が将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額及び将来加算一時差異の解消見込額と相殺され、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない(税効果会計基準 注解(注 5))。 

 

上記に沿って、将来の税金の減額効果を有すると判断される金額のみを、

繰延税金資産に計上することになります。

 

(vol.60へ続く)